公開日:2022/12/22

更新日:2024/03/18

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介護者が知っておきたい薬「しる100」

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この記事では、何かの病気・病態を持っていらっしゃる高齢者の介護者に知っておいていただきたい薬 約100種類についてご紹介します。介護者になぜ薬の知識が必要なのか、大切な観点や薬の副作用について、医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長で医師の佐々木淳氏に解説していただきます。

介護者が知っておきたい薬「しる100」

解説していただいた医師

監修者プロフィール

佐々木 淳Jun Sasaki

プロフィール

医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長

1973年京都府生まれ。1998年筑波大学医学専門学群卒業。社会福祉法人三井記念病院内科/消化器内科、東京大学医学部付属病院消化器内科等で勤務したのち、足を踏み入れた在宅医療で「単に治療する医療ではなく、総合的に患者を診て、その幸せを支える医療ができる」ことを実感し、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。2008年 医療法人社団悠翔会に法人化、理事長就任。2021年 内閣府・規制改革推進会議・専門委員。現在、首都圏ならびに沖縄県(南風原町)、愛知県(知多半島)、鹿児島県(与論町)に全21クリニックを展開。約7,300人の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行っている。

ご本人にとっての「幸せ」を考えた薬の適正化に向けてわたしたちができること

介護者に必要な観点

介護者が知っておきたい薬100種類

高齢者の転倒の実に4割が、薬の副作用だと言われています。薬による血圧の下げすぎや血糖の下げすぎで、悪影響が出ている可能性があるのです。

厚生労働省が医薬品として認めている薬の全ては、64歳以下の若い方を対象に、安全性と有効性が確認されたものです。では、75歳は?85歳は?この薬飲んでも大丈夫ですか?と問われると、答えは「わかりません」ということになってしまいます。

確かに、血圧が高すぎる方は下げたほうが良いし、眠れない方は睡眠薬を飲んだほうが良いかもしれません。しかし、そうすることによって転びやすくなるかもしれないし、もしかすると誤嚥しやすくなるかもしれません。

現在、ご高齢者で大量のお薬を飲んでいる方がどうなっているかを調べていますが、少なくとも若い方と同じように治療するために薬を飲むと、良くないことが起こるらしいということはわかってきました。薬というものは高齢者の場合、リスクが大きいということは是非知っておいていただきたいです。そして「この方のこの薬、本当に必要なのかな?」という疑いの目で常に見ていくことが大切です。

適正処方を阻む「現状維持バイアス」

介護者が知っておきたい薬100種類

医療側には「自分達の中にある固定概念を超えられない」という現状維持バイアス(注:バイアス=先入観のこと)があります。例えば主治医が血圧120を超えないことが良いと信じてきていて、実際ご入居者の血圧が120よりもずっと下になるようにコントロールしてきた。けれど「このご入居者が立つときにふらつきます」と言われたとき、その主治医は降圧薬の副作用かもしれないというところまで、思いが及ばない場合が多いです。どうしてだろう、ちゃんと治療しているのに、と考えてしまいます。

介護側にも、この「現状維持バイアス」があります。「この方はいま、薬を飲んで落ち着いているのだから、薬を変えてほしくない」という雰囲気をひしひしと感じることがあります。特に、向精神薬を減らすことに不安を感じる介護職の方は結構多いのではないでしょうか。しかし、医療側は、その都度その都度、その方にとって最適な処方になっているかを見直していかなければいけないし、それをする前提においては、若い方やご高齢者それぞれで治療の目標が違うということを理解しておかなければなりません。だからこそ、介護現場から医療へ情報をフィードバックしながら、新しい高齢者医療を作っていく必要があると思っています。

薬のことに対して「介護職が意見してはいけないのではないか」のような空気のある介護の現場もありますが、医療側が知りたいのは「この方、お変わりありません」というような「解釈」ではなく、「この方は転倒したが、普段から血圧が低めで推移している」といった「事実」です。「事実」を得ることで、医師として総合的な判断ができます。介護施設内の看護職員と介護職員の間で、ご入居者の「事実」が共有され、それが医療側に伝わることが、チームワーク上、とても重要になってきます。

約100種類の薬を知れば、一目置かれる介護職に

介護者が知っておきたい薬100種類

薬物療法というと、なんとなく医療領域のような印象になりますが、服薬のお手伝いをするのは介護職の皆さんになりますし、その後のご入居者のご様子をみていくのも介護職の皆さんです。実は薬の副作用や、服用することの必要性を一番身近で感知できるのは、介護職の皆さんなのです。

薬と言うと「難しそう」と思う介護職の方が多いのですが、衝撃的なことに、実は現場で使用されている薬のほとんどは100種類程度の薬の知識があれば理解できます。もちろん特殊な薬がたまに出るというような例外もありますが、だいたいは100種類でカバーできるでしょう。

約100種類の薬について皆さんが、ざっと知識を身に付けてしまえば、何の薬を服用しているのか、薬を服用した結果、何が起こるかということも、ある程度、想像することができるようになります。そして例えば、「先生、この人足がむくんでいるけど、薬の影響ではありませんか?」と介護職が医師に質問してくる。そんな介護職の方がいたら「むむ、お主、やるな…」というかんじで医師も一目置きます(笑)。そして、その人から伝わる「事実」には、きちんと耳を傾けなきゃ、という気持ちになります。

介護と医療の領域が完全に合致する必要はないですが、それぞれの専門性を保ちつつ、お互いの領域をちょっとでも知っておくってことが、やはり大事なことではないかなと思います。ご高齢者に関しては、薬の問題をはじめ、医療と介護が、各々の専門性を活かしつつ、かつ立場や組織の枠組みを超えて、コミュニケーションをとることで、解決していかなければならない課題がたくさんあります。

医療と介護の本気のチームビルディング、まだスタートラインについたばかりです。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。

介護者が知っておきたい薬 約100種類

介護者が知っておきたい薬をご紹介します。薬の名前をクリックしていただくと、薬辞典のページへ飛び、その薬がどんな効果があるか、重大な副作用や高齢者にとってリスクが高い薬かどうかなどが分かります。

何か体調に変化があった場合に、薬の影響がないか確認する際にご活用ください。

アレルギー疾患治療薬

パーキンソン病治療薬

ビタミン製剤

下部消化管疾患治療薬

漢方薬

肝・胆・膵疾患治療薬

眼科用剤

気管支喘息・COPD治療薬

狭心症治療薬

血管拡張薬

抗うつ薬

抗てんかん薬

抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬

抗血栓薬

抗精神病薬

抗認知症治療薬

抗不安薬・睡眠薬

抗不整脈薬

降圧薬・心不全治療薬

高尿酸血症治療薬

骨・カルシウム代謝薬

止血薬

脂質異常症治療薬

歯科・口腔用剤

耳鼻咽喉科用剤

上部消化管疾患治療薬

腎疾患治療薬

制吐薬・眩暈薬

造血薬

代謝異常症治療薬・甲状腺疾患治療薬

鎮咳薬・去痰薬・呼吸障害治療薬

鎮痛薬

糖尿病治療薬(インスリン)

糖尿病治療薬(経口血糖降下剤)

泌尿器・生殖器

皮膚科用剤

副腎皮質ステロイド

麻薬及び類似薬

輸液・栄養製剤

利尿薬

薬についての正しい知識を身につけてより良いケアを目指しましょう

病気・病態をお持ちの高齢者にとって一番身近な存在は、ご家族や介護職などの介護者です。介護者が薬についての知識や観点を習得することで、より良いケアにつながるはずです。

ぜひ、その方らしい生活の支援のために介護アンテナをご活用ください。

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介護者が覚えておきたい薬100種類 掲示用ポスター

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著者プロフィール

介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department

プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!

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