公開日:2022/12/22

更新日:2024/03/18

会員限定!動画が見られる

高齢者の糖尿病|介護者が知っておきたい食事制限と薬物療法時の注意点

  • ブックマーク
  • いいね!2

介護アンテナ会員の方は、ログインするとこの記事でご紹介している動画
見られます。無料の会員登録は30秒で完了!

この記事では高齢者の糖尿病で、介護者が知っておきたい基礎知識や食事制限、薬を使った治療法の注意点などについて、医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長で医師の佐々木淳先生が動画でわかりやすく解説します。(2022年12月の情報です)

高齢者の糖尿病|介護者が知っておきたい食事制限と薬物療法時の注意点

介護者が知っておきたい糖尿病の注意点や治療法のポイント

糖尿病は血糖値をきちんとコントロールしないと、40代や50代など早いタイミングで脳梗塞や心筋梗塞など血管の病気を起こしやすくなる病気です。

これを防ぐことが糖尿病の治療の目的となります。糖尿病の治療を行うにあたりどんな治療法があり、どんなことに注意しなければいけないのかなどについてご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病とはどんな病気?

血糖値が上がる病気という風にイメージされている方が多いと思います。実際に血糖値を下げる力が弱ってしまうというのが糖尿病ですが、これは現象の一つです。

糖尿病は、一言でいうと血管の老化が早まる病気です。血糖値が下がりにくくなる理由はさまざまですが、高い血糖値やインスリンに血管が晒されることによって動脈硬化という血管の老化が加速していきます。

高齢者の糖尿病は血糖値の下げすぎに注意

高齢者の糖尿病は血糖値の下げすぎに注意

年を重ねると血管は老化していきます。そのため多くの高齢者はすでに動脈硬化の状態です。常に動脈硬化になってしまっている状態で、血糖値を厳格にコントロールすることは、あまり意味がありません。

むしろ血糖値を下げすぎることによって、認知症の進行が加速したり、転倒や骨折、誤嚥・窒息のリスクが高くなるということが分かってきていて、近年では特に要介護者の場合は血糖値は下げすぎず、少し高めの方がよいということが言われています。

糖尿病治療:ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)の目安

糖尿病治療:ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)の目安

通常、糖尿病治療の目標はヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)という数値で追いかけていきます。年齢層や状態によって目標値は異なりますので、下記をご参考ください。

薬物療法をする場合の目安

  • 若い方(~64歳):7%未満
  • 前期高齢者(65歳~75歳):7.5%未満
  • 後期高齢者(75歳~):8%未満
  • 要介護者・認知症の方:7.5%~8.5%未満

要介護者や認知症の方の場合には、7.5%よりも下げないという下限も設定されています。若い人の場合は7%よりも下げなければいけないのに、要介護者や認知症の方は7.5%より下げてはいけないということを考えると、低血糖のリスクがいかに大きいかということが分かるかと思います。

高齢者の過度な食事制限は危険!

糖尿病の場合、一般的には食事療法がとても大事であると言われいます。食事療法をしっかり行ったうえでそれでも血糖値が高い方は血糖値を下げる薬やインスリンを使うというのが一般的です。高齢者の場合にも食事療法が基本になるのですが、気を付けていただきたいことがあります。

実は糖尿病の高齢者の多くが、食事制限で指示された食事よりも少ない食事量になっています。年齢と体重と活動量から1日の目標摂取カロリーを例えば1200キロカロリーと計算しても、それ以上食べていないケースが多いです。

食事が少なければ血糖値が上がらないのでよいと思うかもしれませんが、食事が少ないと体重がどんどん減り、筋力が減ります。そうするとADL(日常生活動作)が低下して転倒骨折を起こしやすくなったり、寝たきりになったり、要介護のリスクがどんどん高くなってしまいますし、死亡のリスクも高くなるということがわかっています。

食事制限をする際はまず現在の食事量を把握することから

食事制限をする際はまず現在の食事量を状把握することから

上記のことから要介護の糖尿病の方を見たら、すぐに「食事制限」という風に考えないようにしましょう。「この方に必要なエネルギーはどのくらいなのか」ということまずは把握し、それでも食べすぎているということであれば、少し量を控えるということはあってもよいかもしれませんが、多くの場合そこまで食べられていないと思います。

上記のことから介護者はしっかりと食べていただく支援を行うことが大切です。その上で、血糖値が上がるようであれば、薬やインスリンなどを増やすということ考えたほうがよいでしょう。

糖尿病の薬物療法

糖尿病の薬物療法は飲み薬と注射の2種類です。それぞれの治療とその注意点についてご紹介します。

飲み薬

高齢者の糖尿病治療に適した薬

糖尿病の飲み薬にはさまざまな種類があります。最近では1日1回で低血糖を起こしにくい薬も出てきています。高齢の方の場合にはこういったタイプの薬を使っていただくことが多いのですが、なかには、血糖値をより効果的に下げるために、各食前に薬を飲んだり、身体の中の糖を尿として外に出すような新しい系統の薬を使っている方もいらっしゃいます。

ただ、1日の服用回数が増えてくると薬を飲むだけでも大変になってきます。また元々食事の量が少ない方の場合、尿として体の外に糖を捨てるような新しい薬は、せっかく食べた栄養を体の外に捨ててしまい、栄養状態の悪化に繋がることもあります。

高齢者の場合は、低血糖を起こしにくく、服用回数が少ない薬で治療を組み立てていくのがよいのかもしれません。

注射

高齢者のインシュリン注射

糖尿病の注射治療というのは飲み薬の治療だけではうまく血糖値が下がらない方が行います。

高齢者の場合には食事の量が減っている方が多いので、若い頃はインスリンだったけれども歳をとってくるとインスリンが不要という方も多くいらっしゃいます。特に注射量が少ない方は飲み薬に変更できる方もいらっしゃると思います。

注射は低血糖を起こしやすい治療でもありますので、できるのであれば飲み薬に変更することをおすすめします。

適切な管理をすれば糖尿病は怖くない病気!

適切な管理をすれば糖尿病は怖くない病気!

糖尿病は放置すると怖い病気ですが、きちんと管理をすれば天地を全うできる病気でもあります。ここまでのご紹介で若い方の糖尿病と高齢者の糖尿病は違うということがお分かりいただけたと思いますが、高齢者の糖尿病はいくつかのポイントがあります。

  • 血糖値は下げすぎないほうがいい
  • 摂取カロリーの確保
  • 薬の適正化

いずれにしてもきちんと管理をすればそこまで難しいものではありません。 糖尿病があってもしっかりおいしく食べてよい状態で過ごせるようにみんなでサポートしてあげましょう。

全文の表示には
ログインが必要です。
※介護アンテナはすべてのコンテンツを
無料でご利用いただけます

会員登録(無料)をして
全文を表示する

解説していただいた医師

佐々木 淳Jun Sasaki

プロフィール
医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長

医療法人社団 悠翔会|公式ホームページ

1973年京都府生まれ。1998年筑波大学医学専門学群卒業。社会福祉法人三井記念病院内科/消化器内科、東京大学医学部付属病院消化器内科等で勤務したのち、足を踏み入れた在宅医療で「単に治療する医療ではなく、総合的に患者を診て、その幸せを支える医療ができる」ことを実感し、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。2008年 医療法人社団悠翔会に法人化、理事長就任。2021年 内閣府・規制改革推進会議・専門委員。現在、首都圏ならびに沖縄県(南風原町)、愛知県(知多半島)、鹿児島県(与論町)に全21クリニックを展開。約7,300人の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行っている。

著者プロフィール

介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department

プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!

介護アンテナについてはこちら

  • ブックマーク
  • いいね!2
薬辞典

こちらもチェック!

介護職に必要な病気や薬についての基礎知識、薬の適正化についての考え方などを事例交えてわかりやすく解説しています。

その他カテゴリから探す

ブックマークするには
ログインが必要です

いいね!するには
ログインが必要です

介護職のキホン

介護技術

認知症ケア

病気・薬

介護サービス情報

介護資格

介護施設運営

介護レクリエーション

介護イラスト

薬辞典

お出かけ

研修・セミナー

マガジン

介護用語集

ブックマークするには
ログインが必要です