この記事では介助されるご利用者にも介助者にも負担が少なく安全なベッドから車いすへの移乗介助の方法を解説します。ここでは、『麻痺や痛みはないが、自分から進んで動く事は難しい方で、体重がかかれば足に力が入り座位も可能で、コミュニケーションも可能』という方をモデルに解説します。※記事の内容は2021年3月時点の情報をもとに作成しています。
ベッドから車いすへの移乗介助のポイント
1.環境整備(物品)
車いすの準備
フットサポートを上げ、レッグサポートを外す
ベッドからの起き上がり介助に入る前に、車いすは近くに準備しましょう。座位が不安定な方の場合は特に準備が大切になります。
アームサポート・サイドガードをはね上げる
車いすの位置を極力ベッドに近づける(全介助の場合)
2.ご本人が動きやすい姿勢をつくる
ご本人が動きやすい姿勢のポイント
- 浅く座る(太腿の真ん中の部分がベッドの端にくるように)
- 膝よりも臀部(お尻)の位置が上
- 足を引く
- 足底がついている
- 足を開く(肩幅または骨盤幅)
浅座りの介助方法
(1)身体を支えながら、ベッドの高さを調節する
ご利用者の身体を支えながら、つま先がつく程度の高さになるようベッドの高さを調節します。
ご利用者の姿勢が安定していることを確認してから、靴をはいていただく。
(2)肩甲骨を支えて前に出す
肩甲骨を支えて身体を密着させ、支えた側に重心を移動させて、反対側の臀部を浮かせてから前に出します。これが浅座りの状態です。
臀部の浮かせ方:OK例・NG例
しっかりと身体を密着させ、介助を行いましょう。
ベッドの高さ:OK例・NG例
立ち上がる際は、膝より臀部が少し上になる高さにするとご利用者が立ちあがりやすくなります。低いと姿勢が安定しすぎてしまい、立ち上がる際に大きな力が必要になります。
もし浅座りで前に出すぎたときには深座りの介助を行う
深座りの介助方法
ベッドの高さを調節し、靴を履き、肩甲骨を支え、支えた側に重心を移動させて、反対側の臀部を浮かせるところまでは、浅座りの介助と同じです。
深座りの介助では、臀部が浮いた方の腸骨を前方から押します。
車いすをご本人に合わせる
ご本人の姿勢が整ったら、車いすをご本人に合わせます。車いすのブレーキがしっかりかかっていることを確かめます。座面と膝の間をこぶし1個分程度あけましょう。
3.介助者の姿勢
- 支持基底面を意識し、ご本人の軸足(車いすに近い方)の延長線上に介助者の車いす側の足を置く。車いすから遠い方の足は、踏み込んだ時に両者の膝が重なるくらいの位置に置く。介助者自身、後方への重心移動・回旋・座る姿勢が安定する位置に足があるようにする。
- 重心の高さをご本人に合わせて腰を低くする。
- 車いす側の肩甲骨と反対側の骨盤をしっかり支え、密着する。
4.自然な身体の動きにあわせた介助
介助を行う際はご本人の顔は、前方に向けていただきます。
①前方に誘導することで臀部を浮かせる
②臀部の高さを変えず、ご本人と一緒に回転する
③密着したままゆっくり座る
介助を行う際のNG例
NG例その1:ズボンを持つ
NG例その2:介助のスピードが速い
NG例その3:勢いよくドスンと座らせる
5.ご本人の姿勢(安定)
車いす上で深座りになる
密着したままゆっくり座っていただきます。
深座りになっていただく際のポイント
- かかとが浮かない程度に足を引く
- 身体を密着させて両肩甲骨を支え、前傾姿勢を促す
- 前方に誘導することで臀部を浮かせる
※この介助は、車いすに座っていて姿勢が崩れた時も整えることができる方法です。
安定した姿勢を確認する
- 顔が真っ直ぐ前を向いている
- 左右に傾いていない
- 深く座っている
- フットサポートに足がきちんと乗っている
介助を行う際のNG例
深座りができていないからと、無理に引っ張り上げることはNGです。
身体の動きに合わせた介助をすることで、安全に車いすへ移乗する
身体を無理に動かそうとすると、ご本人に大きな負担がかかるばかりか、介助者側にも余計な負担がかかることになります。身体の動きに合わせ、安心して移乗できるように心がけましょう。
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著者プロフィール
介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department














