入浴は身体の清潔を保ったり、身体を温めて血行を促進させたり、心身のリラックスが期待できるなどさまざまな良い効果があります。一方、入浴時は転倒や血圧変動などのリスクも高まります。 この記事では入浴介助の注意点、リスク、ポイントについてわかりやすく解説します。
保清の介助を行うにあたって
保清の効果・リスクを理解した上で、プライバシーに配慮し、安全かつ快適な保清の介助を行いましょう。
保清の目的と効果
身体的な意義
- 清潔を維持することで、皮膚の生理機能が高まり、褥瘡や感染症を予防する
- 血液循環がよくなる
- 新陳代謝を高める
- 筋肉の緊張を和らげる(関節の拘縮や痛みの軽減にもつながります)
- 介助者側から全身の状態を観察できる機会となる(褥瘡、湿疹、外傷の早期発見につながる)
心理的な意義
- 爽快感が得られる
- リラックスできる
- ご本人と介助者の個別のコミュニケーションを行う場となる
入浴のリスク
入浴介助中は事故が起こりやすいタイミングでもあります。入浴時のリスクを事前に把握しておく必要があります。
特に転倒と体調変化のリスクが高まります。しっかりリスクを回避するための対応方法を覚えておきましょう。
浴室での転倒リスクが高い理由
1.環境の違い
浴室や脱衣所は、居室などと比較してリスクの高い環境になっています。
- すべりやすい
※浴室は床がぬれていてすべりやすい
※脱衣所がぬれていたらすぐに拭き取りましょう - つかまるところが少ない
- バリアフリーでない場所が多い
2.衣類を着ていないという状態
- 装具(杖、歩行器など)を持たない状態
- ご本人が衣類を着ていないので介助者側も手がすべって支えにくい
- 施設などでは普段から靴を履いて生活している場合も多いが、入浴の際は靴をはいていない
3.入浴前後の疲労
いつもはできる動作も、入浴前後は疲労もするので転倒のリスクが高まります。
※入浴時は、自立の方の転倒が多い。
※立位のとれる方でも、立ったままの更衣は危険なので、できるだけ座って着替えていただく。
浴室への移動はアセスメントにより、歩行、シャワーキャリーなど適切な移動方法で移動するようにします。脱衣所や浴室は転倒リスクが高いことを念頭にいれておきましょう。
体調変化のリスクが高まる原因と対応策
1.室温の変化による血圧変動
血圧の変動が大きいことで、脳出血や脳梗塞・心筋梗塞のリスクがあります。
→入浴前のバイタル測定、水分補給が重要
※特に冬場はヒートショックに注意!
ヒートショックは主に室内での温度差により起こるといわれています。脱衣所や浴室に暖房を置くなどして予防をするとよいでしょう。
2.発汗による脱水
入浴時の発汗は気づきにくいため、入浴前後の水分摂取が重要です。
3.全身運動による体力消耗
入浴中はカロリー消費が大きいため、無意識のうちに体力を消耗し、疲労している場合があります。注意深く観察が必要です。
4.消化機能の低下
入浴時は、皮膚の血管が拡張され、血流量が増えます。そのぶん、内臓の血液量が減少するため、消化機能が低下します。食事の前後30分の入浴はひかえましょう。
その他注意が必要な場合
- 心臓疾患がある場合
- 浴槽内では水圧がかかるため半身浴などでの対応が必要
- 入浴前24時間以内に転倒があった場合
- 脳疾患の恐れがあるため、入浴の可否を検討する
- ご本人から不安や体調不良の訴えがあった場合
- 事故につながる可能性があるので、看護職員に報告し対応を相談する
入浴介助の注意点
移動時の注意点
- ご自身で歩ける方も目を離さない
- 床がぬれていないか常に注意
- 靴をはいているときに比べて歩行能力、立位能力が低下するため転倒に注意
洗体時の注意点
シャワーの温度はご利用者に確かめていただく
シャワーの温度は、介助者の手で温度を確認してからご本人の手にかけて確かめていただきましょう。問題なければ足先・手先からかけていきます。
その他、洗体時の注意点
- ご本人ができるところは自分で洗っていただき、介助者はお手伝いする(全部介助者が介助してしまわない)
- 陰部、おしり、わきの下など、恥ずかしいところほど汚れがたまりやすいので清潔にする
- 皮膚が乾燥しやすく、弾力性も低下するのでこすりすぎず、やさしく洗う(表皮剥離に注意する)
※皮膚の油分を必要以上に落としてしまうこともあるため、石けんはつけすぎない - 更衣介助時も含め、皮膚の異常を発見したらすぐに、看護職員に伝える(傷、出血、湿疹、かさつき、赤み、打ち身、発疹、熱感、腫れ)
ご本人の状態を把握し、安心安全な入浴介助を
保清は身体的にも心理的にもとても重要な役割を果たします。その反面、外的・内的要因それぞれでリスクも伴います。
そのため保清のリスクや注意点をしっかり理解しておくことが大事です。
ご利用者の身体的な機能と入浴設備により、入浴介助方法が変わります。ご利用者ごとの具体的な介助方法を確認して、安全に介助するよう心がけましょう。
※記事の内容は2021年3月時点の情報をもとに作成しています。

著者プロフィール
介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department














