公開日:2022/02/21
更新日:2024/03/18
登録者:川﨑 陽一
施設レクに苦手意識をもっている介護職員は約8割に上り、レクに不安や悩みを抱えている方が多いのが現状です。この記事ではそんな方に向けて、レクを盛り上げる方法、今日からでも簡単にできるおすすめのレクリエーションをご紹介します。
「レクリエーションが苦手」、「レクの時間が苦痛になっている」という介護職員は多く、介護現場におけるひとつの課題になっています。しかし、その原因がわかれば、自ずと解決方法がわかってくるものです。
今回は、施設レクが盛り上がらない原因をご紹介したうえで、レクを盛り上げる方法と、おすすめのレクリエーションをご紹介します。考え方や取り組み方を少し工夫すると、驚くほどレクが楽しくなります!
レクリエーションは本来愉快で楽しいもののはずですが、レクに苦手意識があり、苦痛になってしまっている介護職員の方が多いのが現状です。介護職の転職サイトを運営するクリックジョブ介護の調査によると、介護職員の約8割の方が「レクに苦手意識を持っている」と回答しています。
理由として多かったのは、以下のような声でした。
※株式会社プレイケア調べ
また、高齢者向けレクリエーションの教育やコンサルティングを行う株式会社プレイケアが行ったアンケートによると、介護施設の介護職員の88%が専門的・本格的なレクリエーションの研修を受けておらず、そのうち93%の方が専門的・本格的な研修を受けたいと回答しています。
※株式会社プレイケア調べ
こうした現状をふまえると、施設レクに不安や悩みを抱えている介護職員は多く、なんらかの教育やマネジメントを必要としていることがわかります。
施設レクのマンネリ化や、盛り上がらない原因はどんな点にあるのでしょうか。主な原因としては以下の3つが考えられます。個人の資質というよりは、レクの運営方法による部分が大きいです。
施設レクのマンネリ化は、メニューバランスがよくないことが原因になっていることが多いです。普段行っているレクの種類が偏っていないか、あらためて確認してみましょう。
メニューバランスを整えるときは、「小学校授業バランス」を用いると便利です。小学校の授業のように、さまざまな科目(種類)をバランスよく振り分けることを意識してください。
新しいレクを考えたり、準備したりするのが負担になっている場合は、応用可能なレクをいくつかもっておくと便利です。1つのネタからさまざまなバリエーションのレクを展開することができます。
詳細は、後述の「盛り上げるための3つのコツ」や「簡単・おすすめのレクリエーション」をチェックしてみてください。また、「小学校授業バランス」については、「介護施設で盛り上がる!トレンド・人気の高齢者向けレクリエーション」で詳しく紹介しています。
関連記事介護施設で盛り上がる!人気・トレンドの高齢者向けレクリエーション
レクのメニュー自体は面白いのに、いまいち場が盛り上がらないということは多々あります。この場合、介護職員に対してご利用者の人数が多く、職員のキャパを超えていることが原因の場合があります。
このケースでは、ご利用者の人数と取り組む時間を少なくすると、と解決できることがあります。これに関しては、管理する立場の方がコントロールしましょう。
ご利用者に楽しんでいただくためには、まず介護職員自身が楽しんでいることが大前提です。レクを企画するときには、ぜひ「介護職員の趣味や特技、やりたいことを活かすこと」を大切にしてください。ここが、意外とおざなりになってしまっていることが多いのが現状です。
どうしても人前でうまく話せないという方は、趣味・特技をふまえたメニューを、ご利用者お一人を誘って5分間やってみることから始めてもよいです。小さな成功体験が自信につながります。
上記の原因をふまえ、レクを盛り上げたいときに役立つポイントを3点ご紹介します。
いずれも難しいことではありません。要点を押さえられれば、今日・明日からでも採り入れられます。
上記でご紹介したように、企画を立てるときは介護職員自身が楽しめているかどうかが重要です。趣味や特技をどんどん採り入れていきましょう。興味のあるレクを企画・選択したら、ご利用者向けにカスタムしていきます。その際、以下の点を押さえるとスムーズにまとまります。
ご利用者の状態や能力に合わせてカスタムするときは、年齢や性別など集団分母が一番大きいところ=中間層に標準を合わせます。中間層に合わせることで、全体をムラなく盛り上げることができます。中間層以外のご利用者へのサポートは、レクを進行する中で行うことができるので、ご安心ください。
前述したように、すべてのレクを集団で楽しもうとするのは無理があります。中には少人数に向いたものがあり、これらをバランスよく実施することで、飽きのこないレクの時間を実現できるのです。
対策としては、「一度に参加する人数をしぼり、午前と午後で2回行う」、「レク担当を15分ずつ交代して行う」などがあります。レクのあり方を柔軟にとらえ、企画や計画に反映していきましょう。
レクの導入では、あいさつを兼ねた声かけが重要な役割を果たします。話す内容自体はなんでもOKです。「今日は何の日」や「自己紹介」など、ご自身が話しやすいものを選びましょう。このとき、介護職員が一生懸命話す必要はありません。話すよりも、以下の点に注力しましょう。
導入時の声かけで意識したいのが「ご利用者の発語を促す」ことです。発語をきっかけに参加意識が高まり、一気に雰囲気を変えることができます。よって、必然的に声かけの内容は問いかけがメインになります。
「今日は何日でしょうか?」「私の名前がわかる方はいらっしゃいますか?」など、ご利用者が答えやすい問いを投げかけましょう。グーチョキパーの指体操など、発語を伴う簡単な体操も有効です。
ご利用者に安心して参加していただくために、ご自身(介護職員)の名前、今から行うレクの内容、拘束時間は、毎回必ず伝えましょう。
特に自立度の高いご利用者は、誰が何をいつまで行うのかがわからないと不安を覚えます。名前、内容、時間を明確にして、安心感を与えることが大切です。基本的なことですが、慣れてくるとおざなりになりやすい部分であるため、今一度心に留めておきましょう。
進行時は、全体が盛り上がるようにコントロールすることが大切です。ご利用者の状態や自立度はさまざまですから、レクを行っていると盛り上がっているグループとそうでもないグループが生まれることが多々あります。そんなときは、以下の方法を試してみてください。大勢で行うレクリーションで役立ちます。
盛り上がっているグループの様子を、そのほかのグループの方に向けて外部アナウンスしてみましょう。こうすることで、ほかのグループに刺激を与えられるとともに、ご利用者全員に場の一体感を感じてもらうことができます。
この方法は「外部効果演出」とも呼び、大勢で行うレクリエーションを盛り上げるときに有効な方法です。また、自立度が高くコミュニケーション能力に長けたご利用者に、あえてサポートをお願いするのも一手です。全体のバランスを見ながら調整していきましょう。
レクリエーションを盛り上げるには、メニュー自体に盛り上がる要素をちりばめるのが近道です。盛り上がるレクリエーションは、「単純」「明快」「偶然性」を兼ね備えていることが多いため、この3つは押さえておきましょう。
まずは、ルールが単純であることです。どなたでも一度で理解できるルールのレクは、非常に盛り上がります。ルールはレクを面白くする要素の1つですが、シンプルにすることで「楽しむこと」に集中しやすくなります。
外から見て何を行っているのか一目でわかるレクは、全体に一体感をもたらします。さきほどの外部効果演出にもつながります。明快さは、色や音などでも演出できます。
3つの中で特に重要なのが偶然性です。施設レクは、ご利用者の自立度や身体機能の違いによって、勝敗や出来栄えに偏りが生まれやすいです。
いつも自立度の高い同じ方が勝つ、上手にできるということが続くと、参加意欲を失ってしまうご利用者もあらわれ、これでは持続性がありません。「偶然できてしまう」「誰が勝つかわからない」という要素を取り入れてみてください。
ここでは、「単純」「明快」「偶然性」を取り入れたおすすめのレクリエーションを紹介します。いずれもシンプルで、道具もそろえやすいものばかりです。それぞれアレンジ可能なので、考え方の参考にしてみてください。
積み上げたりひっくり返したり、あるいは全部倒したりというルールが簡単なゲームは、単純、明快という点で非常に優れています。実際にやると集中力が求められるため、やり応えは十分です。
このとき、赤、青など派手な色を塗った紙コップやカードを用いると、より明快になります。チームを変えれば何回でも取り組めるので、持続性もあります。
テーブルで行いたいときは、間違い探しやパズル、迷路など、ルールが単純な脳トレ問題もおすすめです。知識よりも発想で答えられるものを選んでみましょう。
これらは特に偶然性が期待できるレクです。どなたにも公平に勝つチャンスがあります。 サイコロをふるゲームは、3回ふってゾロ目を出した方が勝ち、数字の合計が多い方が勝ちなど、少しずつ難易度を上げていくと盛り上がります。
ピンポン玉を入れるゲームでは、車椅子のご利用者のほうが、肘が安定して入りやすいという側面もあります。こうした仕掛けを考えるのも介護職員の役割です。ちなみに、ピンポン玉がはねる音はちょうどいいレベルの音量で、補聴器にもあまり響かないため取り入れやすいでしょう。
おすすめのレクリエーションをもっと知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。ご利用者のニーズに合ったトレンドのレクをご紹介しています。
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レクリエーションは自由度が高い分、個人の判断に委ねられる部分が大きく、うまくいかないと悩みのタネになりやすい側面があります。
今回ご紹介した中から、できそうなことを少しずつでもいいので取り入れ、小さな成功体験を積み上げていきましょう。少しでも楽しい時間を体験するとコツがわかり、コツをつかむと徐々にキャパが広がってきます。あせらず、自分のペースで取り組むことが大切です。
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川﨑 陽一
プロフィール
株式会社プレイケア代表取締役社長 兼日本アクティビティ協会理事長 兼日本音楽健康協会顧問