公開日:2022/02/21
更新日:2022/05/02
登録者:介護アンテナ編集部
施設レクリエーションの中でも人気の高い「外出」「運動」「音楽」をテーマにしたトレンド・人気のレクリエーションをご紹介します。あわせて、レクリエーションの意義や目的、施設レクを計画するときに重要な「メニューバランス」と「人数バランス」についても解説します。
川﨑 陽一
プロフィール
株式会社プレイケア代表取締役社長 兼日本アクティビティ協会理事長 兼日本音楽健康協会顧問
「ご利用者に喜んでいただくために、レクリエーションをもっと盛り上げる方法を知りたい」という介護職員の方は多いでしょう。施設レクをさらに豊かなものにするには、あらためて「レクリエーションとはどんなもので、誰のために行うのか」を明確にすることが大切です。
そこで今回は、施設レクの意義や目的をご紹介したうえで、トレンド・人気の盛り上がるレクリエーションの種類やポイント、レクリエーションの計画を立てるときの注意点などを解説します。
施設レクの意義・目的を一言でいうと、「自己実現のお手伝い」です。より本質をとらえた場合、「ご利用者を中心とした5つのステークホルダー(利害関係者)の自己実現のお手伝い」とあらわすことができます。この意味をしっかりと理解するためには、まずは「アクティビティ」について知っておくことが大切です。
近年、レクリエーションを「アクティビティ」の1つととらえる動きがあるのをご存じでしょうか。アクティビティとは、食事、入浴、排泄などを含む、ご利用者のすべての日常生活活動のことです。この概念においては、レクリエーションもその全活動の中の1つに位置付けられます。
これまでのレクリエーションの概念は「笑顔創造のお手伝い」というものでした。しかし、レクリエーションをアクティビティの1つとしてとらえると、レクも食事介助や入浴介助と並び、「自己実現のためのお手伝い」という要素が必要ということがわかります。
この視点で施設レクを考えると、レクリエーションの目的がはっきりし、悩みや課題に対する解決方法も明確になってきます。
施設レクを考えるときは、「レクリエーションは誰のためのものなのか」を整理することも重要です。施設レクには以下の5つのステークホルダー(利害関係者)が存在し、相互に自己実現を図ります。
レクリエーションで悩みや課題を抱えている介護職員の皆さまにお伝えしたいのは、「介護職員の自己実現」も重要だということです。職員の皆さまの趣味・特技、やってみたいことを、どんどん具現化していきましょう。そうすることで、魅力あるコンテンツを自信を持って提供できるようになります。
施設レクを盛り上げるためには、前提として、そのレクリエーションが「ご利用者がやってみたいこと」であることが大切です。そのためにまずは、ヒアリングをしてニーズの把握から始めるといいでしょう。
多くの施設で調査すると一定の傾向は見られます。ご利用者に何をしたいかを問いかけたとき、上位にランクインするのは概ね以下の3つです。
上記をふまえ、ここでは「外出」「運動」「音楽」をテーマにしたおすすめのレクリエーションをご紹介します。
外出レクを実施されている施設は多いですが、日常的に取り入れるのは難しいですよね。そこでおすすめなのが「外出した気分になってもらうレク」です。たとえば、以下のようなレクリエーションはいかがでしょうか。
最近、注目を集めているのが「外気浴」です。外気浴とはその名の通り、外気にふれることをいいます。外気浴は午後のあたたかい時間がおすすめです。一定時間エントランスの扉を開放して風が通るようにし、窓を開けてご利用者に集まってもらい、外の空気を吸ってもらいましょう。
とてもシンプルな方法ですが、外の空気や光、音などを肌で感じることができるため、気軽にかつ安全に外出と似た体験を提供することができます。このとき、簡単な体操を組み合わせてもいいでしょう。
デジタルを活用して「オンライン散歩」や「オンライン旅行」などもおすすめです。難しくとらえる必要はなく、身近な景色や介護職員の体験をご利用者と共有する感覚でOKです。むしろそのほうが地域性やオリジナリティが生まれ、ご利用者に親しんでもらえるレクリエーションになるでしょう。
たとえば、介護職員が近くの神社などに行って動画を撮影し、それを施設のオーディオで再生します。紅葉の季節であれば、映像を通じて葉の色づき具合を一緒に楽しむなど、日常のささやかな出来事を共有しましょう。
あるいは、介護職員が旅行に行ったときの動画を活用するのも面白いです。職員の趣味も活かせるため、イキイキと取り組めます。
身体を動かすレクリエーションを行うときに、ぜひ注目してほしいのが「下肢筋力」です。よく行われているレクリエーションは上肢体操のものが多いため、下肢筋力を強化できるレクを意識的に取り入れると、バランスよく身体機能の維持・向上を図れます。
下肢筋力を動かすレクリエーションは「体操」や「ゲーム」などさまざまな手段がありますが、最も大事なキーワードは「楽しいこと」です。以下のポイントをふまえると、楽しく身体を動かせます。
上肢に比べて下肢は動かしにくいため、単純に体操するだけでは楽しめないご利用者も少なくありません。そんなときには、「思わず足が動いてしまう」という要素を加えてみましょう。
たとえば、すごろくゲームであれば「サイコロをふるときは5回足踏みをする」などのシンプルなルールを設けます。足を動かすことをゲームのルールに盛り込むことで、遊びの延長として運動を促すことができます。
体操と音楽の相性は抜群です。これについては、実感している介護職員の方も多いのではないでしょうか。音楽を使った体操レクの代表格といえるのが「歌謡体操」です。
ご利用者に馴染みのある曲を選ぶとリズムを取りやすく、口ずさむこともできるため自然と盛り上がります。ご利用者自ら行うことが難しい下肢を使ったレクリエーションも、音楽の力を借りれば能動的に取り組んでもらいやすくなります。
コロナ禍においては、発語を控えて生活されてきたご利用者がほとんどです。そのため、「声を出したい」という基本的なニーズはこれまで以上に高まっています。
そこでおすすめなのが、音楽を使って発語するレクリエーションです。大きな声で歌うのは難しくても、音に合わせて口を動かし、発語するだけでも、ご利用者の満足度を高めることができます。
このとき、口腔ケアも意識できるとなおよいです。特に「口輪筋」と「笑筋」がポイントです。口をすぼめたり横に引っ張ったりする動きを含んだ「ウイウイ体操」をベースにするといいでしょう。
ご紹介した「外出」「運動」「音楽」をテーマにしたレクは、たしかに盛り上がりますが、これだけでは充実したレクを実施できているとはいえません。また、思うように場が盛り上がらないときは、人数バランスに課題が見られることがあります。
ここでは、施設レクを計画するときに重要な「メニューバランス」と「人数バランス」について解説します。
普段行っているレクリエーションの種類は、どのようなバランスになっていますか?残念ながら何らかの種類に偏り、マンネリ化してしまっている施設は少なくありません。
レクのメニューバランスを整えるときは、「小学校授業バランス」で考えるとわかりやすいです。まずは、普段行っているレクを小学校の授業項目で分類し、現状のバランスを把握しましょう。
下記は介護施設120施設へのアンケートを基にした各施設で実施されているレクリエーションを小学校授業バランスで分類した結果です。
科目は体育、音楽、美術、家庭科、総合、社会、国語、算数、理科の9科目です。
※株式会社プレイケア調べ(実施年:2021年11月~12月 対象者:介護施設従事者 対象施設数:120施設)
施設レクの現状を調査すると、施設ごとに違いはあるものの、体育、音楽、美術で60%程度を占め、下位の算数と理科は合わせて数%というのが実態です。
レクを計画するときは、上記のようなバランスをできる限り均等になるようにしていきます。
算数や理科というと難易度が高く感じるかもしれませんが、数字を使った簡単な脳トレクイズであれば取り入れやすいのではないでしょうか。理科であれば、中庭に小さな畑をつくる、ガーデニングをする、あるいは金魚やメダカを飼うという発想で考えれば、アイデアも浮かびやすくなるはずです。
しっかりと意識していけば、1年程度でバランスがとれるようになります。マンネリ化対策にぜひお役立てください。
施設レクでは、一人あるいは数人の介護職員がご利用者全員を対象にレクリエーションを実施することが多いですが、この場合、以下のような課題が生まれやすくなります。
こうした課題があるときは、ご参加するご利用者を「グループ」に分けると解決できることがあります。
グループの人数は、最初は1テーブル単位で考えると始めやすいです。「4〜8名のご利用者に1名の介護職員」という人数バランスにしてみましょう。また、グループを作るときは、現有能力や趣味趣向などでセグメントすると、ご利用者一人ひとりに寄り添ったレクリエーションを行いやすくなります。
とはいえグループに分けるとなるとその分、介護職員が必要になるため人員を確保できないという施設も多いでしょう。その際は、レクの時間を分け、場所を工夫すると、少ない人数でも実現しやすくなります。
グループ単位であれば、狭いスペースでもレクを行えます。1階のフロアに集まってもらわなくても、各階にある多目的室などを利用すれば、移動の手間と時間を省けます。
施設レクを盛り上げるためのヒントをお届けしました。ご紹介したレクリエーションは、あくまで一例です。ポイントを押さえれば、どんどん新しいオリジナルのレクリエーションが生まれてくるでしょう。それこそが、ご利用者の自己実現、そして介護職員の皆さまの自己実現につながります。
いずれは、ご利用者一人ひとりに向けたメニューを開発し、実施できる環境を整えられるとベストなので、まずは出来ることから取り組んでいきましょう。
皆様の施設をご利用している方々の自己実現を施設レクを通じて解決してみて下さい。
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川﨑 陽一
プロフィール
株式会社プレイケア代表取締役社長 兼日本アクティビティ協会理事長 兼日本音楽健康協会顧問
介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department
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株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!