公開日:2022/02/21
更新日:2024/03/18
登録者:川﨑 陽一
レクリエーションの参加を拒否されて悩んでいる介護職員の方に向けて、参加を促す誘導の方法をご紹介します。興味関心チェックシートの活用方法や、参加を促す時の注意点などもまとめました。
施設レクリエーションを行う際、ご利用者に興味をもってもらえなかったり、参加してもらえなかったりという経験のある介護職員の方もいらっしゃるでしょう。ご利用者のレクへのやる気を高めるには、いくつかのポイントがあります。
こちらの記事では、ご利用者をレクに誘導するときのポイントや、参加意欲を高める場づくりなどについて解説します。興味関心チェックシートについても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
施設レクリエーションに取り組んでいると、なかにはレクリエーションを拒否するご利用者もいらっしゃいます。担当している介護職員の方は、困ってしまうこともあるでしょう。
しかし、ご利用者がレクリエーションを拒否する背景には、必ずなにかしらの理由があるものです。「やりたいレクリエーションではない」「毎回同じような内容でつまらない」「体調や気分が優れない」「ルールの理解ができない」など、ご利用者それぞれの思いが存在します。
介護職員の皆さんに、まず行っていただきたいのは、そうしたご利用者の状況や声にしっかりと耳を傾けることです。理由を知り、それに合った適切なアプローチをしていくことが解決の糸口になります。この点を前提に、以降でご紹介するレクへの誘導ポイントや、参加意欲を高める方法などを実践していってください。
レクリエーションへの参加を促すためには、まずレクの存在を知ってもらうことが重要です。ここでは、アナウンスと声掛けの2つの側面から見ていきます。
最初に、アナウンスのポイントを見ていきましょう。簡単に行えることとして、月間予定表のアレンジ方法と、音楽を使った効果的なアナウンス方法をご紹介します。
レクリエーションの月間予定表を作成している施設は多いと思いますが、ご利用者の目に留まっていない可能性もあります。
その場合は、予定表を貼る場所を増やしましょう。フロアに1枚だけだったのを2枚にする、ご利用者の居室にも貼らせてもらうなど、方法はいろいろあります。食事前に、午後に行うレクリエーションをアナウンスするのもおすすめです。
また、月間予定表を週間予定表にして、アナウンスの回数を増やすのも一手です。その際、介護職員の名前や顔写真、イラストなどを添えると、より注目を集めやすくなります。
文字や言葉だけではアナウンスしきれないこともあるでしょう。その場合は、レクリエーションが始まる合図として、「毎回同じ音楽を流す」という方法もあります。何度も繰り返して流し、ご利用者に「この音楽が鳴るとリビングで楽しいことが始まる」と認識してもらえれば成功です。
また、「良い匂いで誘う」という方法もおすすめです。ホットプレートでお菓子を焼いたり、季節の食材で簡単な調理をしたり、ときには季節に合わせた味と香りを楽しむレクリエーションを行ってみてはいかがでしょうか。さまざまな方法で、ご利用者の五感を刺激していきましょう。
続いて、声掛けのポイントを見ていきます。ここでご紹介する内容は、レクリエーションへの参加を促す手段としてだけでなく、日々のコミュニケーションを深める方法としても有効です。いろいろなシーンでお役立てください。
お名前をしっかりとお呼びすることは、コミュニケーションの基本です。より丁寧にコミュニケーションをとりたいときは、フルネームでお呼びすることをおすすめしています。多くの方がきっと経験があるように、フルネームで名前を呼ばれると、苗字だけのときよりも会話への意識が高まり、好意を感じやすくなるものです。
また、全スタッフがご利用者のお名前をフルネームで覚えている施設は、質の高いサービスを提供できていることが多いです。
ご利用者に声を掛ける際、立ち止まっていますか?歩きながら声をかけている場合は、伝わっていない可能性も高いです。
立ち止まって声を掛けるメリットは、目をしっかり合わせて話せることと、聞こえやすいほうの耳に近づけて声を掛けられる点です。ご利用者の聴力に合わせて音量を調節し、ご利用者の理解度を確かめながら、丁寧にコミュニケーションをとっていきましょう。
声掛けの内容については、そのご利用者だけに向けたメッセージにしていくこともポイントです。また、ご利用者が楽しみにしているレクリエーションが控えているときは、数日前から繰り返し声掛けを行うことで、参加意欲を効果的に高めることができます。
特別なレクリエーションを控えていなくても、予定表を一緒に見ながら会話を重ねるだけでもレクへの興味を高められます。シーンごとに工夫しながら行っていきましょう。
レクリエーション開催にあわせて季節の壁飾りを変えるなどもおすすめです
施設レクでは、空間的資源をどう活かすかも大切なポイントです。空間を演出し、景色に変化をもたらすことで、ご利用者の興味を引くことができます。
空間的資源は2つに分類され、1つは普段使っている「日常空間」、もう1つはあまり使うことのない「非日常空間」です。それぞれの場づくりのポイントや、活かし方を解説します。
食堂や多目的室などの日常空間で演出するときは、「季節の色」がキーワードです。秋から冬になるタイミングであれば、オレンジ色から茶色へ、あるいは緑から赤などにシフトしていくといいでしょう。
たとえば、以下のようなものをカラーチェンジする方法があります。
テーブルクロスや職員のエプロンは季節ごとにチェンジしやすいツールで、実際に実施している施設もあります。 そこに、季節に合ったBGMを組み合わせると、さらに効果を発揮します。
施設の中に、普段あまり使っていない部屋やスペースはありませんか?まずは、どんな空間があるか、リストアップしてみましょう。非日常空間は、以下のようなスペースが該当します。
施設の敷地内であれば安全面はコントロールできるため、極端な言い方をすれば、パブリックスペースはすべてレクリエーションの場として活用できる可能性があります。
また、普段使っていない空間を生かしたレクリエーションを行おうとすると、新しい企画が生まれる可能性も高いです。たとえば和室であれば抹茶教室を開いてみたり、中庭であれば畑をつくってみたり。マンネリ化防止にも大いに役立ちます。
ご利用者がどんなレクリエーションを望んでいるかを知りたいときは、「興味関心チェックシート」を活用する方法があります。興味関心チェックシートは、ご利用者が「やってみたい・興味がある」と思っていることを可視化できるシートです。
シートには下記のようなフォーマットがあるので、項目に沿ってご利用者やご家族に聞き取りをしていきます。ここでは、興味関心チェックシートをさらに役立つものにするためのポイントをご紹介します。
ご利用者と生活をともにしていくと、いろいろな特性が見えてきます。たとえば、好きな食べ物や得意なゲーム、好きな曲や好きな芸能人など、介護職員の皆さんがもっている情報は、おそらく興味関心チェックシートには収まらないことでしょう。
フォーマットを施設独自にカスタムして、ぜひオリジナルのシートを作成してみてください。ほかのどこにもつくれない、施設の素晴らしい財産になります。
興味関心チェックシートを生きたものにするためには、アップデートが欠かせません。できれば、半年に一度書き換えるくらいのイメージで追記していけるのが理想です。どんなささいなことでも構いません。職員の皆さんが知り得たことを、その都度足していくことで、ご利用者の「今」を的確にとらえることができます。
ここまで、レクリエーションへの参加意欲を高める方法などをご紹介してきました。参加を促すことは大切ですが、参加を強要するようなことはあってはなりません。
ご利用者にストレスを与え、ますますレクリエーションから遠ざかってしまううえに、なぜ参加したくないのかという本質的な課題を見逃してしまいます。参加するかしないかは、あくまでご利用者ご本人が決めることです。ご利用者の意思を尊重することを第一に取り組んでいきましょう。
特に、経験が浅い若い世代の介護職員の方などは、一生懸命に取り組むあまり、ときに客観性を失ってしまうことも。先輩や上司の方の見守りが大切です。
レクリエーションへの参加意欲を高める方法やポイントをご紹介しました。いずれの方法も、根本にあるのは「コミュニケーションを丁寧にとる」ことにあります。
「ご利用者の立場に立った適切な声掛けができているか?」「心のこもった声掛けができているか?」あらためてご自身に問いかけてみてください。自信をもってイエスと言えたとき、ご利用者の心は少しずつ動いていくでしょう。
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川﨑 陽一
プロフィール
株式会社プレイケア代表取締役社長 兼日本アクティビティ協会理事長 兼日本音楽健康協会顧問