急速に高齢化が進む日本では、介護が必要となっても安心した生活を送れるよう、2000年から介護保険制度がスタートしました。では、実際に受けられる介護保険サービスにはどのようなものがあるのでしょうか。その種類と概要をご紹介します。※記事の内容は2021年3月時点の情報をもとに作成しています。
高齢化が進む日本では、介護を必要とする高齢者も増加傾向にあります。政府が発表した「平成30年版高齢社会白書」によると、65~74歳で要介護の認定を受けた方は2.9%であるのに対し、75歳以上では23.5%の方が要介護の認定を受けており、その割合が急激に上昇していることがわかります。
一方で、介護を担う働き盛りの人口は減少の一途をたどっており、核家族化により、介護力が低下しているにもかかわらず、高齢者介護のほとんどは家族に依存している状態でした。
そこで、利用者自らの選択により、多様なサービス提供事業者から、サービスを総合的・一体的・効率的に受けることができる「介護保険制度」が創設されました。
ここでは、介護保険制度に基づいて利用できるサービスの種類と、その概要についてご紹介します。
介護保険制度は、介護を家族だけの問題として抱えるのではなく、介護が必要な方を社会全体で支えることによって、双方の精神的・肉体的な負担を軽減することを目的として2000年に制定されました。
この制度は、被保険者(65歳以上の第1号被保険者と40歳から64歳までの医療保険加入者である第2号被保険者)を、市区町村が保険者とし、国全体で支え合うしくみで成り立っています。
被保険者が介護保険のサービスとして受けられるものは、大きく次の3つに分類されます。
受けられるサービスの一部は、要介護度別に支給限度額が決まっており、限度額内であれば費用の1~3割負担で利用することができます。
施設サービスとは、介護保険施設に入居して利用することができる介護サービスです。
介護保険施設には、大きく「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設(介護医療院へ順次転換中)」の3つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
介護老人福祉施設は、一般的に「特別養護老人ホーム」や「特養」と呼ばれる介護保険施設です。
原則として要介護3以上の認定を受け、常時介護を必要としながらも在宅での介護が困難な高齢者に対して、身体的な介護と生活支援を提供します。
民間の施設に比べてかかる費用が安価なことがメリットですが、その分ニーズも多く、地域によっては入居までかなり時間を要す場合もあります。
特別養護老人ホームへの入居条件は、新規入居者は要介護度3以上の認定を受けた65歳以上の高齢者であることが原則です。なお、特例として要介護1や2の方についても、やむをえない事情(認知症、単身世帯など)により、居宅での生活が困難な場合には入居することが可能です。
寝たきりや認知症など、自宅では介護が難しく、長期療養が必須な高齢者を受け入れてくれる一方、医師の常駐が義務付けられておらず、看護師の滞在時間も限られているため、常時医療ケアが必要な場合は入居が出来ないこともあります。
介護老人保健施設は、利用者が在宅復帰を目指すために、医師による医学的管理の下で看護・介護・リハビリ・その他日常の世話を提供する介護保険施設です。
入居できる方は、65歳以上で要介護度1~5の認定を受け、病状が安定していて、リハビリテーションの必要がある方になります。あくまでも在宅復帰を目的としているため、入居できる期間は原則3カ月になります。
長期利用が想定される特別養護老人ホームとの違いは、短期利用に限られる点です。
介護療養型医療施設は、療養病床などのある医療機関で、継続的な医療行為や管理が必要な患者を受け入れています。
ここでは医療ケアや機能訓練が充実している一方、生活のサポートは充実しておらず、2024年までに、今後増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへの対応のため、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」などの機能と、「生活施設」としての機能を兼ね備えた、新たな介護保険施設「介護医療院」へ移行することになっています。
居宅サービスは、要介護1~要介護5の認定を受けた方が、自宅で生活しながら利用できる介護保険サービスです。種類は非常に多く、大きく次の5つに分類されます。
利用者が自宅にいても、自立した日常生活を送れるよう支援することが目的の訪問サービスは、介護や看護、リハビリテーションなどさまざまな種類があります。
住み慣れた我が家で介護を受けることができるメリットがあり、介護サービス全体の受給者数のうち、約3割が利用しています。
通所サービスは、日常生活のサポートや機能訓練サービスを受けるために利用者が施設に通うものをいいます。介護者の負担を軽減でき、要介護者は家族以外の人と接することができるのがメリットです。
短期入所は、介護者が何らかの事情で介護を継続できない状態になった場合に、連続して最長30日まで要介護者を受け入れてもらえるサービスです。
介護サービスや機能訓練を受けられる短期入所生活介護と、医療ケアを受けられる短期入所療養介護があります。
自宅で生活しながら受けられる介護保険制度の居宅サービスには、福祉用具の貸与や住宅改修も含まれます。
尚、基本は1回の利用になりますが、転居をした場合や、介護の必要な程度が3段階以上あがった場合は、再度申請を行うことができます。
地域密着型サービスとは、介護が必要になっても「住み慣れた地域で過ごしたい」と願う要介護者の生活を地域ぐるみでサポートするサービスで、地域に住む要介護者が対象になります。
地域の特性を活かした小規模な施設が中心となり、地域住民だけが利用できることから、利用者同士の交流や顔なじみのスタッフによる介護サービスを受けられることが特色です。
小規模多機能型居宅介護は、小規模な施設への通所を中心に、必要に応じて訪問や短期間の宿泊などのサービスを組み合わせて日常生活のサポートや機能訓練を受けられる介護サービスです。
夜間対応型訪問介護では、訪問介護員が夜間のトイレ介助やオムツ交換、食事や入浴といった介護や生活支援、安否確認などに、定期巡回、または要請に応じて随時訪問の対応も行う介護サービスです。
定期巡回・随時対応型介護看護は、訪問介護スタッフと看護師が連携し、24時間体制で定期的な訪問を行うほか、臨時の要請にも対応してもらえる介護サービスです。
認知症対応型通所介護は、認知症の診断を受けた方が、可能な限り自宅で自立した生活ができるよう施設に通って入浴や食事、機能訓練などを受けられる通所介護サービスです。
看護小規模多機能型居宅介護は、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせたサービスで、複合型サービスとも呼ばれていましたが、平成27年度介護報酬改定において、名称が変更になりました。
認知症対応型共同生活介護は、要支援2以上の認知症の方が入所し、可能な限り自立した生活ができるよう食事や入浴などの生活支援や機能訓練を受けることができる介護サービスで、グループホームとも呼ばれています。1つの住居に5~9人の利用者が、介護スタッフと共同生活を送ります。
地域密着型特定施設入居者生活介護では、入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどが、日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護では、入所定員30人未満の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が、日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを提供しています。
介護は、受ける側も行う側も、負担が少なく快適なサービスであることが望ましい状態です。介護保険サービスを上手に活用して、お互いにとってより良い環境で、質の高い生活を送れることを考えましょう。
一方で、介護保険サービスだけに頼るのではなく、その方が住み慣れた地域で、いつまでも自立した生活が送れるよう、地域の資源に着目し、地域のサポートを活用することも大切な視点です。
介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department
プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!
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