公開日:2023/03/23

更新日:2023/03/23

介護のキホン

言語コミュニケーションとは?種類、例 など介護職が知っておきたい大事なこと

ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員) 川上 由里子さんによる連載「介護職のコミュニケーション上達のヒント「月明かり」〜人と人とのつながりのために〜」今回は第4回目として介護職のコミュニケーションには欠かすことのできない「言語コミュニケーション」についてご紹介いたします。

言語コミュニケーションとは?種類、例 など介護職が知っておきたい大事なこと

伝える言葉を意識した「言語コミュニケーション」とは

言語コミュニケーションとは?種類、例 など介護職が知っておきたい大事なこと

言語コミュニケーションとは、文字通り「言語(言葉)」を使ったコミュニケーションの手法です。話したり、聞いたりすることを指します。本連載の第3回で表情や声色、話す速度、身振り手振り、身だしなみなどの非言語コミュニケーションについて解説をしましたが、言語コミュニケーションはそれと対になるコミュニケーション手法といえるでしょう。

言葉は強力な伝達手段、誰もが気軽に使えるものですが、それだけに注意も必要です。自分自身が使う言葉を大切にしていますか?メッセージを共有するためには、相手にとってわかりやすい言葉を使い、情報や知識、想いなどを届けます。伝える言葉も大切なコミュニケーションであることを意識し丁寧に扱いましょう。

言語コミュニケーションの基本「あいさつ」

あいさつは相手の存在を認め友好的に関わろうとする意思表示です。はっきりと明るい口調で「おはようございます。」「こんにちは。」「いってらっしゃい、お気をつけて。」自分から先に挨拶の言葉をかけましょう。

私たちは誰もが自分の存在を認めてもらいたいという承認欲求を持っています。挨拶の言葉の前に「○○さん、おはようございます。」と名前を添えたり、季節の言葉や、相手が関心を持っている言葉を一言添えるとさらに友好的にコミュニケーションが深まります。

相手の承認欲求に応えるあいさつの例

相手の承認欲求に応えるあいさつの例

  • 「○○さんおはようございます。○○さんのお好きな紫陽花が咲き始めましたね。」
  • 「△△さんおかえりなさい。今日のお散歩はいかがでした?昨日より遠くに行かれたのでお疲れではないですか。」

言語コミュニケーションをとる際に大事な5つのポイント

言語コニュニケーションに際して、注意したい大事なことは下記の5つです。

  1. わかりやすい言葉ではっきりと伝える
  2. 話を聴く準備を促す
  3. あいまいな表現や専門用語は避ける
  4. 心配りを伝えるやさしい言葉をかける
  5. 肯定的な言葉をかける 否定的な言葉は使わない

それぞれについて下記で詳しく説明いきましょう。

1.わかりやすい言葉ではっきりと伝える

わかりやすい言葉で相手が聞き取りやすいようはっきりと伝えましょう。声の大きさ、速度、滑舌、これらを意識すると円滑なコミュニケーションにつながりやすくなります。

言葉の聴き取りにくさが原因でコミュニケーションが上手くいっていない、そんな自分の言葉の習慣に気がついていない人をよくみかけます。高齢者と関わる介護職はとくに意識することが大切です。

私がおすすめしたいのは、呼吸法とボイストレーニング。日頃から滑舌良くお腹から言葉を発することです。下記の北原白秋の「五十音」という4.4.5の定型詩は、アナウンサーなどプロの発声練習にも使われます。日本の情景が浮かぶ美しい言葉です。毎朝声にだして自分の言葉を意識しながら読み上げてみましょう。表情も言葉も心も、いきいきとしてきます。

発声練習におすすめの北原白秋「五十音」

水馬(あめんぼ)赤いな。ア、イ、ウ、エ、オ。浮藻(うきも)に小蝦(こえび)もおよいでる。

柿の木、栗の木。カ、キ、ク、ケ、コ。啄木鳥(きつつき)、こつこつ、枯れけやき。

大角豆(ささげ)に酢をかけ、サ、シ、ス、セ、ソ。その魚(うお)浅瀬で刺しました。

立ちましょ喇叭(らっぱ)で、タ、チ、ツ、テ、ト。トテトテタッタと飛び立った。

蛞蝓(なめくじ)のろのろナ、ニ、ヌ、ネ、ノ。納戸(なんど)にぬめってなにねばる。

鳩ぽっぽ、ほろほろハ、ヒ、フ、ヘ、ホ。日向(ひなた)のお部屋にゃ笛を吹く。

蝸牛(まいまい)螺旋巻(ねじまき)、マ、ミ、ム、メ、モ。梅の実落ちても見もしまい。

焼栗、ゆで栗ヤ、イ、ユ、エ、ヨ。山田に灯(ひ)のつく宵の家。

雷鳥は寒かろ、ラ、リ、ル、レ、ロ。蓮花(れんげ)が咲いたら、瑠璃(るり)の鳥。

わい、わい、わっしょい。ワ、ヰ、ウ、ヱ、ヲ。植木屋(うゑきや)、井戸換へ(ゐどがへ)、お祭だ。

2.話を聴く準備を促す

伝えるときには“相手が聴く準備”が必要です。

「今、3分程度お話をして大丈夫ですか?」「これから●●についてお話しますね。」と具体的に提示することで、これから始まる話の内容をイメージしやすくなり心の準備ができます。

聴く側、話す側のどちらにとっても安心できる時間となるでしょう。そして伝える内容は短く簡潔にすることも重要です。

3.あいまいな表現や専門用語は避ける

「けっこう時間がかかりますよ。」「もっと多めにお願いします。」など受ける人によって解釈が異なる言葉はトラブルが生じやすく要注意です。あいまいな言葉が口癖になっていませんか?また自分は当たり前で使っている言葉でも相手にとっては当たり前ではない場合もあるので注意しましょう。

あいまいな表現・専門用語を避けた例

あいまいな表現・専門用語は避ける

  • 「少々時間がかかりますのでお待ちください」→「10分ほどお待ちいただけますか」
  • 「もう少し多めにできますか」→「10回程度やってみましょう」
  • 「今日カンファがあります」→「今日相談会があります。」

4.心配りを伝えるやさしい言葉をかける

人に喜ばれる言葉は、自分本位の言葉ではなく、相手(ご利用者)本位の言葉です。相手に生じていることや、相手が感じていることに気を配りましょう。相手の身に自分をおいて声をかけることができると、やさしい言葉が自然に生まれてきます。

「○○さん、足の痛みはいかがですか?」「昨晩はよく眠れましたか?」困っていることや問題が生じていないか気遣いの言葉をかけましょう。「今日のお野菜硬くありませんか?飲み込みにくくないですか?」心配りの言葉をかけると、「硬くて食べるのに時間がかかって残してしまったわ。」などという言葉が返ってくるでしょう。

ご利用者の心の声を聞くことができれば、食事内容を変更するなどの工夫に繋げることができます。自分に関心を持ってくれることが伝わると本音を聞くことができ、その方に寄り添った対応ができるでしょう。

5.肯定的な言葉をかける 否定的な言葉は使わない

介護職の肯定的な言葉は、ご利用者の心にプラスの影響を与えます。

肯定的な言葉がけの例

  • 「○○さんらしい明るい作品ができましたね。よくここまで頑張りましたね。」
  • 「今日のお洋服の色はとってもお似合いですよ。お散歩しましょうか。」
  • 「いつも笑顔の○○さんに来ていただけると場の空気が和みます。またお越しくださいね。」

頑張ったこと、大切にしていることを口にだして言葉で褒め、認めてあげましょう。共に喜ぶことで利用者の意欲を引き出し、自信を高めることに繋がります。また、介護現場ではどうしても否定的な言葉が多くなりがちです。

否定的な内容を言い換えた例

5.肯定的な言葉をかける 否定的な言葉は使わない

  • 「勝手に○○しないでください。何度いったらわかるのですか!」→「○○する前には一声かけてくださいね。私もお手伝いします。」
  • 「どうして参加しないのですか!」→「どこか具合の悪いところがありますか?」「○○さんの好きなこと、私におしえてください」

否定的な言葉が多くなってしまう時は、「この人にとってはどうしたらよいのだろうか」と、基準を自分ではなく相手に変えてみることです。そうすることで否定的な言葉が相手を尊重した肯定的な言葉に置き換わります。

日頃から自分自身や周囲の人を肯定的にみる、プラスを感じ、認め、言葉にするためにはトレーニングや実践が欠かせません。問題やマイナスばかりに目をむけず、人のプラスをみつける自分自身の眼、心も育てましょう。

「言葉」は人間だけがもっている気持ちの伝達手段

いかがでしたでしょうか?みなさんはどんな言葉を届けたいですか?動物も植物も言葉を持ちません。言葉は神様が人間に与えた美しい贈り物と私は考えます。コミュニケーションを妨げるものにもなり、人と人を繋ぐものにもなる言葉。新人もベテランも、日頃の自分の伝え方を今一度よく確認し意識してみましょう。

そして、良い言葉を感じるためには、介護の仕事以外の時間も大切にすることです。本を読む、映画を観る、見たことのない景色や人に出逢う、歌を聴く、五感で感じる。自分の心が動く大切な言葉がみつかります。言葉には、日々の自分づくりが活かされることも忘れないでください。
 

著者プロフィール

川上 由里子Yuriko Kawakami

プロフィール
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

結人|ケアコンサルタント 川上由里子公式ブログ

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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