介護保険サービスを利用する際に必要となるケアプランの作成や、介護利用者とその家族の相談や施設との調整などを行う介護支援専門員(ケアマネジャー)。そのやりがいや、資格取得のメリットなどについて紹介します。
介護職の仕事は、直接介護を提供することのみではありません。自身の体力やライフステージに合わせて、経験を積んだ後に、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転職する方が多くいます。
では、ケアマネジャー資格を取得することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。仕事内容ややりがいのほか、ケアマネジャーに向いているタイプについてご紹介します。
ケアマネジャーとは、要介護認定を受けた方が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアプラン(介護サービスの計画書)作成やサービスを提供する事業者との調整を担う役職のことをいいます。また、そのポジションに就くために必要な資格の名前でもあります。
ケアマネジャーになるためには、毎年10月に実地されるケアマネジャー試験に合格し、「介護支援専門員実務研修」を受講しなくてはなりません。
ケアマネジャー試験の受験資格は、介護福祉士など、国家資格などに基づく業務または生活相談員などの相談業務を5年間、通算900日以上実務経験していることです。
介護支援専門員実務研修受講試験は、2018年度より受験資格が変更されたことで、受験者数が1年前の2017年度の13万1,560人から半数以下の49,332人に減少。合格率は10.1%でした。合格率の低さからも、かなりの難関資格といえます。
なお、合格者数は4,990人で、このうち介護福祉士が2,452人と、全体の49.1%でした。一般介護職からケアマネジャーを目指す場合は、まず介護福祉士として5年の実務経験を経て、ケアマネジャーを目指すのが最短の道ともいえるでしょう。
ケアマネジャーの資格を取得するまでの、具体的な流れはどのようになっているのでしょうか。
実際に、ケアマネジャーの資格を取得した場合の流れについて、その一例をご紹介します。
※その方の適正や勤務先の施設によって違いがあります。
ケアマネジャー資格の取得には年数がかかり、合格率も高くはありませんが、資格を取得することで次のようなメリットがあります。
介護職のキャリアには、大きく分けて「現場を極める」「専門職に就く」「マネジメント職に就く」の3つがありますが、ケアマネジャーは専門職を極めた姿です。ケアマネジャーは、介護業界の花形職種といえるでしょう。
一般の介護職は、ケアマネジャーの作ったケアプランに基づいて、プランに適した介護サービスを提供するのが仕事です。
もし、「こうしたほうがいいのでは?」と思っても、ケアマネジャーとかけ合ってまで、修正することはなかなかできません。ケアプランを作る立場になることで、「自分ならこうするのに」を実現することができます。
厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員処遇改善加算を取得している事業所におけるケアマネジャーの給与平均(ボーナスや残業代まで合わせた額)は月額35万320円となります。
これは、介護職員の平均水準30万970円より高い水準にあり、昨年に比べて7,550円増えています。
ケアマネジャーの収入は、一般の介護職に比べて高めに設定されていることから、資格を取って働くことで、給与アップを期待できます。
勤務先にもよりますが、ケアマネジャーの仕事は基本的に日勤のみの場合が多くなっています。夜勤がない職場も珍しくありません。
ケアマネジャーのやりがいは、まず自分の立てたプランに基づいて行われた介護サービスを受けて、ご利用者やご家族が喜ぶ姿が見られることだと考えられます。ご利用者やそのご家族の希望をくんで、一人ひとりに合わせたケアプランを考えるのは、ケアマネジャーだけが行える仕事です。
介護サービスのご利用者がその人らしい生活を送るサポートを根底から行えることは、ケアマネジャーならではのやりがいといえます。
介護職は、介護を必要とする方を助け、支える仕事なので、大前提として「誰かのためになる仕事をしたい」という思いを持っている方や、目の前の人に関心を持ち、大切にできる優しい方が向いているといえます。
ケアマネジャーの仕事は、ご利用者やご家族の希望を伺うことから始まるので、信頼して話をしてもらえる誠実さやコミュニケーション能力は必須です。
また、ケアマネジャーは居宅サービスを必要とするご利用者35人に対して1人の配置が定められており、施設に常駐する場合でも、1人あたり数十件のケアプランを担当するのが常なので、複数の案件を同時にさばくスケジュール管理能力も求められます。
加えて、非常に多くの書類を作成しなければいけないことから、事務処理が得意であることも素質のひとつといえるでしょう。
ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所などに勤務し、自宅で生活しながら介護サービスを利用する方に向けたケアプランを作る「居宅ケアマネ」と、施設に勤務しご入居者のケアプランを作る「施設ケアマネ」の2タイプがあります。それぞれの仕事内容についてご紹介します。
居宅ケアマネは、まずご利用者の自宅を訪問し、本人とその家族がどんな状況にあるのか、どんな介護サービスを望んでいるのかヒアリングするところから始まります。
できる限り希望を叶える形でケアプランを作り、以後も月に1回程度は訪問して、困っていることはないか、心身の状態は良いかなどをヒアリングします。状態に変化があれば、随時ケアプランを修正していきます。
このほか、サービス提供事業所から集まる利用状況報告書を集計して利用料を計算したり、サービス提供責任者と話し合うためのカンファレンスを行ったりするのも、居宅ケアマネの仕事です。
施設ケアマネは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなどに勤務し、ご入居者のケアプランを作るのが仕事です。
現場の介護職とのコミュニケーションをとることも大切で、必要ならば、現場の介護職向けの勉強会を開いたり、教育を行ったりすることもあります。
ケアマネジャーは、一人ひとりに合った介護サービスの根幹となるケアプランを作る専門職であり、介護福祉士からのキャリアアップとしても人気のある職種です。
ケアマネジャーへの道は決して容易ではありませんが、大きなやりがいがあり、給与面でも一般の介護職に比べて高待遇が期待できます。
介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department
プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!
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