公開日:2020/11/26

更新日:2022/01/26

介護レク

介護レクで人気!ボッチャのルール、用具、高齢者向けアレンジを徹底解説

障がいのある人のために考案されたスポーツ「ボッチャ」。東京パラリンピックの正式種目でもあり、適度な運動量やシンプルなルールから介護施設のレクリエーションとしても人気の高い競技です。

この記事では、日本ボッチャ協会の新井さんに取材のご協力をいただき、ボッチャのルールや必要な道具、介護施設で行うのにおすすめのアレンジルールや高齢者におすすめの理由などをわかりやすく解説します。

介護レクで人気!ボッチャのルール、用具、高齢者向けアレンジを徹底解説

ボッチャとは

ボッチャは、重度の脳性麻痺や四肢に障がいがある人のためにヨーロッパで考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目にもなっています。ジャックボールという目標球をコートに投げ、対戦するチームが赤と青のボールを6球ずつ投げ、自チームのボールをよりジャックボールに近づけるというスポーツです。

日本では元々、特別支援学校で取り入れられていたものの、2016年リオパラリンピックで日本が銀メダルを獲得したことをきっかけにその人気に一気に火がつきました。

ボッチャに必要な用具

ボッチャを行うのに必要な道具の一式を紹介します。

ボッチャボール
高齢者にも人気のスポーツ「ボッチャ」に必要な用具:ボッチャボール

赤と青が6球ずつのカラーボールとジャックボール(目標球)で1セットです。

キャリパー
高齢者にも人気のスポーツ「ボッチャ」に必要な用具:キャリパー

ジャックボールとの距離を測る際に使用する計測器具です。どちらのカラーボールがジャックボールに近いのかが判断できない際に使用します。ない場合はメジャーやコンパス、定規などでも代用できます。

パドル
高齢者にも人気のスポーツ「ボッチャ」に必要な用具:パドル

審判が投球順序を指示する道具です。ない場合は卓球のラケットなどでも代用が利きます。

メジャー
コートを作る際に使用します。公式の大きさで作る場合は縦が12.5mなので、なるべく長いものがおすすめです。
テープ
コートのラインを作る際に使用します。
得点板
得点を記すのに使用します。ホワイトボードや紙などで代用しても大丈夫です。

ボッチャの用具は無料レンタルもある

ボッチャの用具はボールだけでも約2万円、1セット購入しようとすると約6万円とややお値段が張ります。高くて購入できない、という人もいるかもしれませんが、問題ありません。

各都道府県の障がい者スポーツ協会や地方自治体で無料で貸出していることもあります。また、日本ボッチャ協会でも1回5,000円(期間は1週間ほど)で貸出を行っています。

ボッチャのルール

冒頭で少し紹介したようにジャックボールに赤と青のボールを6球ずつ投げ、どれだけ近づけられるかを競います。相手のボールを弾いて自チームのボールを近づけたりとカーリングに似ている部分もあります。ただしボッチャの場合はジャックボールそのものを動かすこともできます。

ボッチャは個人戦・ペア戦、チーム戦があり、個人戦は1対1の2名、ペア戦は2対2の4名、チーム戦は3対3の6名で行います。(後述しますが、介護施設などでの開催の場合、人数を増やすこともできます。)

ボッチャで使用するコート

高齢者にも人気のスポーツ「ボッチャ」のコート

コートの大きさは縦12.5m×横6mです。図の①~⑥のスペースのことをスローインボックスといい、プレイ人数によってスローイングボックスは異なります。

スローインボックスの位置

個人戦(2名)
一人目:③/二人目:④
ペア戦(4名)
Aチーム:②・④/Bチーム:③・⑤
チーム戦(6名)
Aチーム:①・③・⑤/Bチーム:②・④・⑥

ボッチャのプレイ方法

1.ジャックボールを投げる

先攻後攻を決め、先攻チームの選手が①のスローイングボックスからジャックボールを投げます。

2.最初のカラーボールを投げる

ジャックボールを投げたら続けて自チームのカラーボールを投げます。また投げる際はスローイングボックスから出てはいけません。

3.相手チームがボールを投げる

先行のチームが投げた後、後攻のチームが②・④・⑥いずれかのスローイングボックスからボールを投げます。

4.ジャックボールから遠いボールのチームが投げる

3投目からジャックボールに対し、両チームの一番近いカラーボールの距離を比較し、遠い距離にあるボールのチームが投げます。投球はジャックボールより遠いチームが相手より近づけられるまで続きます。

5.2~4を繰り返す

2~4を繰り返し、ボールがなくなるまで続けます。一方のチームの投げるボールがなくなった場合は、もう一方のチームが連続して投げます。

6.勝敗を決め得点を計測する

  1. ジャックボールに近いカラーボールのチームが勝ちです。
  2. 次に負けたチームのボールでジャックボールに一番近いボールを確認します。
  3. 負けたチームのボールからジャックボールまでの距離内にある勝利チームのボール数を得点として数えます。
介護レクに最適なボッチャのルール・必要な用具

画像のような状況であれば青チームの勝ちで、赤ボールとジャックボールの間には青ボールがひとつなのでこの場合は1得点入ります。

7.次のゲームに移る

得点を計測するまでが1ゲームです。「6.勝敗を決め得点を計測する」までが終了したら次のゲームに移ります。公式ルールでは個人戦とペア戦は4ゲーム、団体戦は6ゲームを行い、その合計得点が多いチームの勝ちです。

ボッチャのプレイ中、こんな時はどうする?

試合中に起こりうるさまざまなケースについての対応を紹介します。

投げたボールがジャックボールやほかのボールに当たった場合
こういった場合でもプレーは続行します。
ジャックボールがコートの外に出た場合
ジャックボールをクロスの位置に戻します。
プレイヤーがスローイングラインを踏んだ場合
投球時にスローイングラインを踏んでいた場合は無効になります。また、そのボールはコートから取り除きます。

介護施設のレクリエーションなどで高齢者の方が楽しむためのルールのアレンジ

ボッチャは車椅子など、障がいをお持ちの方でも楽しめるスポーツですが、さらに気軽に楽しむためにルールをアレンジすることもおすすめです。

日本ボッチャ協会の新井さんにうかがった高齢者向けのアレンジをいくつかご紹介します!

1.ボッチャのコートを小さくする

公式の大きさであれば縦12.5m×横6mですが、例えば縦5m×横5mなど小さくしても大丈夫です。

慣れる前は力加減が分からなかったりするため、距離や方向もバラバラになってしまいがちで試合にならないケースもあります。そのため小さくすることで試合が成立し、初心者でも十分に楽しむことができます。

また最初のうちはジャックボールを近くにセットしてスタートするのも良いです。試合を成立させることでルールの理解度が深まるだけでなく、近くに置くことでより均衡した試合展開になります。そうなると戦略性が求められますが、その戦略を考えるということが頭の体操になるためです。

2.スローイングボックスを減らす

公式の場合は6つのスローイングボックスですが、これを4つや2つにしても大丈夫です。これはボックスの数を減らすことでひとつのボックス面積が大きくなります。そうすると同じボックスでも立った場所によって見え方が変わってきます。

見え方が変わることで戦略が変わったり、作戦会議などコミュニケーションが活発になるという狙いがあります。

3.チーム人数を増やす

公式ルールであれば個人戦は1対1、ペア戦は2対2、チーム戦であれば3対3で行いますが、これを例えば6対6で1人1球ずつ投げるチーム戦にしても大丈夫です。

1人1球にすることで1人の投球の責任感が増すので、より「どう投げたらよいのか」という戦略をしっかり考えることで頭の体操になります。また人が多いことでチームでの作戦会議などコミュニケーションもより増え盛り上がります。

4.ゲーム数を減らす

「ボッチャのプレイ方法」でも紹介したよう公式ルールでは、個人戦とペア戦は4ゲーム、団体戦は6ゲームを行います。これを2ゲームに減らしても大丈夫です。

ゲーム数が多いと実力差があった場合、点差が開いてしまい盛り下がったりプレイヤーのやる気も下げてしまうことがあります。2ゲームであれば点差が開きにくいため常に盛り上がり、またゲーム数を減らし試合数を増やすことで多くの人がプレイすることができるためです。

ボッチャが介護施設のアクティビティにおすすめな理由

現在色々な介護施設のレクリエーションとして取り入れられているボッチャ。なぜここまで人気なのでしょうか。介護施設で人気な理由を紹介します。

ボッチャ

適度な運動量

ボッチャはそもそもが障がいのある人のために考案されたスポーツであるため、激しい運動量が求められるわけではありません。ボールを投げる、ボールを拾うということが適度な運動にもなります。そのため介護施設のアクティビティとして行う際は、ボールを拾う時、サポートする介護士の方はなるべく取らず見守るようにすると良いでしょう。

また、戦略性が重要ではあるもののルール自体はシンプルという点が障がいのある人だけでなく、子どもや高齢者、誰でもが楽しめるポイントになっています。

シンプルなルールと鍵を握る戦略性

よりジャックボールの側に近づけるというシンプルなルールだけでなく、相手のボールを弾いたりジャックボールを動かしたりと戦略がとても重要になります。そのためプレイヤーだけでなく見ている人たちも楽しめますし、戦略が必要な場面では頭の体操にもなります。

コミュニケーションが活発になる

チーム同士だけでなく見ている人たちも一緒になって戦略を考えたりと自然とコミュニケーションが活発になります。また、それだけでなく見ている人たちも他の人たちにルールを教えてあげたりとゲーム以外の場面でも交流の輪が広がっていきます。これもシンプルなルールだからこそのメリットです。

自分で考えたうえで、コミュニケーションをとることが重要な「ボッチャ」

今回は一般社団法人日本ボッチャ協会の新井大基さんに取材をさせていただきました。学生時代に介護のお仕事をされていたことがきっかけで、選手のアシスタントとして世界選手権など数々の大会にも出場された経歴をお持ちです。現在は合宿・遠征など選手のサポートや普及イベントでの講習などさまざまな業務に携わっています。

講習やイベントでは子どもからお年寄りまでさまざまな人へボッチャを教えており、そこで実際に行われている「コートを小さくする」、「チームの人数を増やす」などのアレンジルールやそのメリットなどを教えてくださいました。

ボッチャは適度な運動量、難しすぎない技術、シンプルなルールなど誰にでもできるスポーツとして人気だと思っていたのですが、伺ったアレンジルールにはよりボッチャの理解を深めたり、楽しんだりするためという目的や意味がはっきりとあり、介護施設でのアクティビティにも最適だと思えるとても興味深い内容でした。

ボッチャで重要なことは「誰か一人がメンバーに指示を出すのではなく、一人ひとりが自分で考える。その上でみんなでひとつの意見を出すことが重要」と語る新井さん。介護施設などで行う際はプレイヤー・観戦している人全員がコミュニケーションを取って楽しめるようサポートしてみてください。

高齢者の方におすすめなポイントがたくさんある「ボッチャ」

ご紹介した通り、ボッチャは適度な運動や、頭の体操、コミュニケーションの活性化など介護施設のレクリエーションとしてのおすすめの要素が盛りだくさんのスポーツです。

また年齢や性別に関係なく誰とでも真剣勝負ができる点も魅力です。みんなで楽しめるレクリエーションとしてぜひ取り入れてみてください。

取材協力一般社団法人日本ボッチャ協会

著者プロフィール

介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department

プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!

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