公開日:2022/01/17

更新日:2022/06/07

介護のキホン

介護職必見!非言語コミュニケーションとは?種類、例など徹底解説

ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員) 川上 由里子さんによる連載「介護職のコミュニケーション上達のヒント「月明かり」〜人と人とのつながりのために〜」今回は第3回目として介護職のコミュニケーションには欠かすことのできない「非言語コミュニケーション」についてご紹介いたします。

介護職必見!非言語コミュニケーションとは?種類、例など徹底解説

介護職が知っておきたい「非言語コミュニケーション」とは

「非言語コミュニケーション」とは、ノンバーバル・コミュニケーションともいい、その名の通り言語以外でのコミュニケーションのことを指します。具体的には表情や声色、話す速度、身振り手振り、身だしなみなどを指します。

私たちは、情報や思いなどのメッセージを誰かに伝えながら暮らしています。コミュニケーションの語源はラテン語のコミュニカーレ(communicate)。メッセージをやりとりして共有することです。

メッセージを共有するためには、相手に伝わりやすい言葉と伝え方が大切です。届けたメッセージは、相手の感情、思考、行動などさまざまな影響を及ぼしコミュニケーション効果がうまれます。今回は、その伝え方の中で非言語表現についてお伝えします。

介護職にとって「非言語コミュニケーション」が大切な理由

どのような方にとっても非言語コミュニケーションは言語コミュニケーションと同様、もしくはそれ以上に大切なものですが、高齢者とコミュニケーションをとる介護職にとっては非言語コミュニケーションがさらに重要になります。

相手に与える印象の要因は非言語表現が9割

第一印象で好意を持った人の話はすっと心に届くけれど、嫌悪を感じた場合、その人への関心は失せ、聴く耳をもてないといった経験が誰にでもあるのではないでしょうか。

非言語コミュニケーションの影響を感じたエピソード

私自身にも経験があり、父が入院したときのことをよく思い出します。私と両親が入院直後に病室で不安な気持ちになっていた際に看護師が急ぎ足で病室に入ってきました。ベテランナースのようでしたが、髪はボザボサで疲れ、話す言葉はぶっきらぼう。初対面であるにも関わらず笑顔もありません。

両親と私はさらに驚きと不安感でいっぱいになり、入院したことへの悲しみも一層大きくなってしまいました。このとき何を伝えられたのか話の内容よりも悪い印象だけが強く心に残ったのです。そして、その看護師がどうか担当にならないようにと願いました。

この患者家族側の体験は、明るい笑顔、伝える言葉、清潔な身だしなみは、病院や施設だからこそより強く人に安心感を与えているんだと感じ、私自信が人に与える印象をみつめなおすきっかけになりました。入院中は多くの人に助けられましたが、父は以降その看護師と一度も言葉を交わすことはありませんでした。

対人場面で印象を決める3つの要因

対人場面で印象を決める3つの要因

上記は「言葉と態度に矛盾が生じている場合に、人がどのように受け止めるか」を実験したアメリカの心理学者、メラビアン(Mehrabian,A)が見出した法則です。例えば「好き」と言いながら怒った顔をしている、というような言葉と態度が一致しない相手を見たときに、視覚情報>聴覚情報>言語情報の順番に優先されると示しています。

メラビアンは「対人場面で相手に対する好意を決める要因は、視覚情報、聴覚情報、言語情報の3つである」と定義していますが、事実私たちは単純に人が話す言葉のみから情報や印象を受けているのではありません。表情や身振り手振り、声色、声の大きさなどのさまざまなものから情報を得ています。

「おはようございます」という言葉を投げかけるとき、どんな伝え方をしていますか?笑顔で挨拶するのか、無表情なのか、どんな目線で伝えるのか、どんな身だしなみをしているのか。このように目に映る視覚情報や聴覚情報は、言葉以上に人に大きな印象を与えています。

高齢で身体機能や認知機能が低下すると、言語コミュニケーションが理解しにくくなる

高齢になると耳が遠くなったり、認知機能の衰えなどで、言語コミュニケーションがとりにくくなります。

例えばベッドで横になっている高齢者に体調をお伺いする際、離れたところから大声で「体調はいかがですか?」と尋ねるのと、ベッドサイドまで近づき目線を合わせ、手や肩に触れながら尋ねるとでは、相手が受ける印象は大きく変わることでしょう。

このように意思疎通がむずかしくなってきた高齢者と信頼関係を築くためにも、非言語コミュニケーションがより大切なことがわかると思います。

好印象を持たれるための非言語コミュニケーション

好まれやすい印象のために意識したいこと

好印象を持たれやすい非言語コミュニケーションの例をご紹介します。一般的に「好印象を持たれやすい」と言われている例で、その方の心身の状況により異なる場合があります。コミュニケーションを重ねて、心地よいと感じていただけるコミュニケーション方法を目指しましょう。

視覚情報

好まれやすい印象のために意識したいこと

1.表情
柔らかい表情、自然な笑顔で話していますか?笑顔は温かさ、優しさを伝え、安心感を与えます。
2.アイコンタクト
適切なアイコンタクトで相手を意識しているメッセージを伝えます。
3.距離・目線の高さ
目の高さによって相手との上下関係を表す。同じ目線が基本です。
4.位置関係
相手と90度の角度で座る直角法がリラックスできるといわれています。
5.姿勢
腕組や足組み、ポケットへ手を入れるなどは相手に心の壁をつくります。
6.身だしなみ
身だしなみは自己表現です。身だしなみを意識することは自分の気持ちにも影響します。毎日セルフチェックをしましょう。

聴覚情報

声の大きい人、小さい人、早い人など、話し方はそれぞれ個性的ですが、その人の印象を決める大切な要因のひとつです。小さな声で緊張しながら話していると、この人大丈夫?と不安感を与え、反対に大きな声で威圧的に話されると、近くに寄ることさえ避けたくなってしまいます。相手の聞こえ方や状況にあわせて聞き取りやすい声、話し方をセルフコントロールしましょう。

聞き取りやすい話し方のために意識したいこと・好まれやすい発声

1.声の大きさ
適度な大きさ。お腹から声を出します(腹式呼吸)。
2.声の印象
明るい声、やわらかい声、やさしい声などが好まれやすいです。
3.声の抑揚(トーン)
相手の状況に応じ高め(元気な印象)、低め(落ち着いた印象・説得力がある)を使い分けます。高齢者には低めトーンが伝わりやすい(高音部から聞き取りにくくなる)。
4.滑舌、開口
口角を上げ言葉をはっきり、下や唇をよく動かします。
5.姿勢
話をする前には背筋を伸ばして深く息をします。

好まれない(好まれにくい)声

1.小さな声
緊張感や自信のない印象
2.語尾を伸ばす、甘えた声
幼稚な印象
3.抑揚のない声
冷たい、面倒くさがり、意欲や気持ちがない印象
4.高い声
興奮しやすい、感情的などの印象

自分の話している声を職場で録音しあい驚いた経験があります。自分が感じている自分の声の印象とはだいぶ異なるものでした。

また他人に確認していただくことで、意外な点を指摘されたり逆に褒められたり。滑舌が悪い、聞き取りにくい、早い、強い、など話し方の特徴を発見できます。自分の声も大切にしようという意識を持つことで、声質やトーンが変わり、声もコミュニケーションに活かせる宝物になります。

非言語コミュニケーションを意識して「伝え上手」を目指しましょう

介護職必見!非言語コミュニケーションとは?種類、例など徹底解説

非言語コミュニケーションが多くの人の心に響いたエピソード

人に伝えることに自信が持てなかった私は、パフォーマンス学、自己表現について2年間週末を利用し学ぶためにとある講義をうけていました。

全国から集まる受講者は医療や福祉職、アナウンサーや教職、役者などさまざまで、みなさん自分の伝え方に悩みや疑問を持っていたのでしょう。講義中、ある人は姿勢を、ある人は呼吸法を、歯の治療を、服装の色を、心の有り様などとパフォーマンス学専門の心理学者から意外なアドバイスが投げかけられ驚きの連続でした。人間関係におけるノンバーバル(非言語表現)の影響の大きさについて初めて学びました。

講義の最終日、受講者全員による100人1分間スピーチが行われ、最も印象に残った人が選ばれるというイベントが行われました。100人中トップに輝いた人は、成熟した大人ではなく未だ若い学生でした。その方は自分の体験からいつか人の役にたてる人間となり家族への恩返しをしたいと自分の心、夢を語りました。語りも言葉も決して上手ではないのですが、心からまっすぐ届くような声、未来をみつめる瞳、飾りのないありのままの姿は私だけでなく多くの方の心に響いたのです。

そのときの壇上スピーチは話すことの苦手な私にとって緊張感高まる時間でしたが、自己表現、メッセージを伝えるとは、上手な言葉で自分自信を飾ることではないこと、まずは自分自信の想いをよく知り、善き自分を人に届け、影響しあうことであると学びました。

「伝える内容」と同じくらい大切な「伝え方」

このようにメッセージは言葉だけで伝わるものではなく、表情、動作、語調などからも伝わり、重要なメッセージの役割を果たします。特に高齢者が相手の場合は非言語コミュニケーションの重要性はさらに増します。

伝え上手になるためには、好意を抱かれる印象をこころがけましょう。介護の現場に限らずさまざまな場面で役にたつはずです。

次回は言語情報、言葉による伝え方についてお伝えします。

著者プロフィール

川上 由里子Yuriko Kawakami

プロフィール
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

結人|ケアコンサルタント 川上由里子公式ブログ

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

介護職のキホン

介護技術

認知症ケア

病気・薬

介護サービス情報

介護資格

介護施設運営

介護レクリエーション

介護イラスト

薬辞典

お出かけ

研修・セミナー

マガジン

介護用語集

いいね!するには
ログインが必要です

ブックマークするには
ログインが必要です