公開日:2021/12/10

更新日:2022/01/26

介護のキホン

フレイルとは?原因や症状、予防についてわかりやすく解説!

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全国に330施設以上の有料老人ホームを運営しているベネッセスタイルケアの社内シンクタンク(研究機関)である「ベネッセ シニア・介護研究所」の研究員が、介護に関する調査・研究のトレンドや最新情報など、介護現場で活躍されている方に向けて、役立つ情報を発信する連載コラム。第3回目の本記事では、高齢者が陥りやすいフレイルについて、症状や予防策などをわかりやすく解説します。

フレイルとは?原因や症状、予防についてわかりやすく解説!

コロナ禍の生活になって、2年近くが経とうとしています。人との接触を避けるために、やむなく外出を控えるようになった結果、心身の機能が低下して「フレイル」になってしまう高齢者が増えています。「コロナフレイル」という言葉さえ生まれています。

今回は、フレイルと今の状況におけるその予防法について、考えてみたいと思います。

高齢者が陥りやすいフレイルとは

フレイルとは?原因や症状、予防についてわかりやすく解説!

フレイル」とは、「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」です。

英語でいう”frailty”のことで、以前は「虚弱」などと訳されていましたが、2014年に日本老年医学会によって、「フレイル」という訳語が充てられることとなりました。(※1)

身体的フレイルだけでない、多面的なフレイル

フレイルは健康な状態と要介護の状態の中間にあたります。一度フレイルになってしまっても、しかるべき適切な介入をすれば、機能を回復することが可能です。

そしてフレイルは多面的です。ロコモティブシンドローム(運動器症候群:運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態)やサルコペニア(加齢による筋肉量の低下)などの身体的フレイルだけでなく、うつや認知機能の低下といった心理的・認知的フレイル、さらには閉じこもりや独居、困窮、孤食等の社会的フレイルも存在します。(※2)

フレイルの原因と予防策

フレイルは加齢に伴う心身の機能の変化に環境要因や社会的要因が組み合わさって起こります。たとえば筋肉量が低下すると(サルコペニア)、それが基礎代謝やエネルギー消費量の低下を引き起こすため、食欲が減退して低栄養状態となり、体重が減少してさらなる筋肉量の低下を招くという悪循環(フレイルサイクル)に入ってしまいます。

フレイルサイクル

図:フレイルサイクル(※3をもとに作図)

上記の図には身体面の要素のみが示されていますが、たとえば人との関わりの減少などの社会的な要素や、意欲の低下などの心理的要素が、このサイクルのあちらこちらに影響を及ぼします。

フレイルを予防するための3つの柱

フレイルサイクルに「栄養」が関係している点にも注目すべきでしょう。しっかり食べることはフレイルの予防に繋がります。そのためには口腔機能の維持が必要であり、「オーラル・フレイル」という概念も示されています。口腔機能は発話機能にも直結し、社会性の維持にも関係していることもわかってきました。

これらの背景から、健康長寿のための「3つの柱」として、栄養(食・口腔機能)、身体活動(運動、社会活動等)、社会参加(就労、余暇活動、ボランティアなど)が推奨されています。(※2)要介護になる人を少しでも少なくするためには、これらのポイントに留意した生活を送ることが重要です。

コロナ禍のフレイル予防

フレイルとは?原因や症状、予防についてわかりやすく解説!

外出や人との接触がままならないコロナ禍においては、フレイル予防はどのように行えばよいでしょうか。

オンラインでの人とのつながりを創造する

コロナ禍で特に影響を受けるのは社会参加と身体活動であり、社会参加の低下が身体活動の低下に大きく影響することがわかってきました。(※4)たとえばオンラインの身体活動プログラムへの参加やe-スポーツ(コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉えたもの)であれば、体を動かすだけでなく、他の参加者や対戦相手と「繋がる」ことによる社会参加の効果も見込むことができます。

東京都八王子市で行われているオンライン運動教室では、参加者のポジティブな気分の向上とネガティブな気分の低下に繋がっている可能性が示されています。(※5)また、e-スポーツを活用した取り組みでは、認知機能の向上効果も示唆されています。(※6)

食を通じて人と繋がり、美味しく食べる工夫を

栄養については、たんぱく質を多く摂れるようなレシピの開発・普及や種々の栄養補助食品・機能性食品の開発が行われているほか、高齢者に足りない栄養素をバランスよく含む「完全栄養食品」の開発を目指す動きもあります。(※7)

また、身体活動同様、食事においても他の人と一緒に食べることの効果は無視できません。食を通じて他の人と繋がる「シェアダイニング」の取り組みは、オンラインでも試みられています。(※8)

これらの取り組みは始まってから日も浅く、本格的な効果検証はこれからですが、お元気な方も、要支援・要介護の方も、できるところから「美味しく食べ」「体を動かし」「人と繋がる」ことが、フレイル予防に繋がりそうです。

引用文献
※1 日本老年学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」(2014年5月)
※2 飯島勝矢.(2018).VII.高齢者と社会(オーラルフレイルを含む).日本内科学会雑誌,107(12),2469-2477.
※3 Xue,Q.L.,Bandeen-Roche, K.,Varadhan, R.,Zhou, J., & Fried, L.P.(2008).Initial manifestations of frailty criteria and the development of frailty phenotype in the Women's Health and Aging Study II.The Journals of Gerontology Series A:Biological Sciences and Medical Sciences,63(9),984-990.
※4 飯島勝矢.(2021).Withコロナ時代のフレイル対策-日本老年医学会からの提言-.Aging&Health,30(1),6-9.
※5 「コロナ下の「フレイル」予防 IT活用で高齢者も楽しく」デンシバSpotlight(日経電子版)2021年8月8日
※6 加藤貴昭,古谷知之,南政樹.(2020).eスポーツという大いなる可能性.Keio SFC journal,20(1),184-207.
※7 「日清食品が「完全栄養食」に挑戦“見た目やおいしさはそのままにカロリー・塩分・糖質・脂質などがコントロール”中長期戦略を発表」Yahooニュース2021年5月15日
※8 同志社女子大学「シェアダイニング」プロジェクトホームページ 2021年10月12日アクセス

著者プロフィール

介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department

プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!

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