公開日:2021/06/23
更新日:2023/03/29
登録者:川上 由里子
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員) 川上 由里子さんによる連載「介護職のコミュニケーション上達のヒント「月明かり」〜人と人とのつながりのために〜」第2回目は介護職に必須のコミュニケーションスキル「傾聴」についての上達方法をご紹介いたします。
「きく」ことの言葉の意味は漢字によって異なり、きき方によって相手とのコミュニケーションや関係性も異なります。3つの「きく」について見てみましょう。
「傾聴」とは相手の話をじっくり共感的に聴くことをいいます。「ただきいている」といった受身的な行動ではなく、積極的、能動的なコミュニケ−ションです。介護職や看護職が目指す「傾聴」とは、話し手のペースに寄り添い積極的な関心を示し共感的に【聴く】(listen)ことです。
介護をする上で、何故「傾聴」が大切なのでしょうか。人は相手に対して信頼感がないと、「この人に話したくない」「この人に介護されたくない」と防衛の気持ちが強くなります。
以前、介護施設でこんなことがありました。新人の介護職員だとトイレまで歩き、ベテランの介護職員だと車椅子でトイレに行かれる方がいました。なぜだろう?とその方にお話を伺うと、「新人の職員さんはいつも私の体調を聴いてくれるの。前に転んだことも知っているので心強いわ」とおっしゃいました。
積極的な傾聴は、自分を受け入れてくれる、自分を理解しようとしてくれるという安心感が生まれ、信頼関係を築くことにつながります。信頼関係が生まれると介護にも協力してもらえるようになり、介護者にとっても大きなメリットになるのです。
次に傾聴にはどんな効果があるか詳しくみていきましょう?傾聴は相手を受け入れ見守る「抱える」機能と、相手が意識していなかったものを引き出し意識化させる「揺さぶる」機能があります。その2つの機能により下記の効果が期待できます。
誠実に相手の立場を理解しようとしながら聴くことは、このように大きな効果を生みます。「傾聴」は看護や介護の現場だけでなく、人間関係のどんな場面でも有効です。
傾聴をするとき、私たちに必要とされる態度があります。カール・ロジャースは聴き手の基本的態度として3つの条件をあげています。
聴き手にとって重要なことは、相手の気持ちに寄り添うことです。話し手が何と言っているのかではなく、何を言いたいのかを理解することが大切です。
傾聴の技法はあくまでも傾聴の心構えがあってのことですが、私自身も傾聴の練習で得た技法を実践することで、人間関係が良い方向に変わりましたのでご紹介します。
高齢者や不安や痛みを抱えた人は、話せない思いや遠慮など相談しにくい背景を抱えています。不安や戸惑い、心配ごとに対して介護職が関わることができる「傾聴」は、思いやりのあるコミュニケーションです。職業に、人生に、対人関係に、改めて意識して心の耳を傾けてみましょう。
参考書籍:「産業カウンセラー養成講座テキスト」社団法人日本産業カウンセラー協会
川上 由里子Yuriko Kawakami
プロフィール
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
結人|ケアコンサルタント 川上由里子公式ブログ