公開日:2019/09/04

更新日:2022/01/26

介護保険制度とは?そのしくみとサービス利用までの手順を紹介

少子高齢化が進む日本では、介護が必要な高齢者を社会全体で支えることを目的とした介護保険制度があります。では、介護保険制度とはどのような制度なのか、どういった介護サービスがどうすれば受けられるのか、そのしくみを紹介します。※記事の内容は2021年3月時点の情報をもとに作成しています。

介護保険制度のしくみとサービス利用までの手順を紹介

家族に介護が必要な状態になり、介護保険サービスを利用したいと思ったときは、まず要介護認定を申請することから始めます。

しかし、元気なうちはあまり関わりがないため、いったいどのような制度なのか、どうすればサービスが受けられるのかなど、不安に思う方は少なくありません。

介護保険について正しく理解し、上手に介護保険サービスを利用しましょう。ここでは、介護保険制度とはどういうものなのか、サービスを受けるにはどうすればいいのかについてご紹介します。

介護保険制度とは?

介護保険制度を理解するために、まずその概要と制度が作られた背景などを詳しく紹介します。

介護保険制度の概要と基本理念

介護保険法は、高齢者の自立支援などを理念に掲げ、1997年12月に成立し、2000年4月に施行されました。

当時の日本では、少子高齢化や核家族化が進み、家族だけで介護が必要な方を支えるのは難しいことが社会問題となっていました。そのため、介護を必要とする方が必要な支援を受けられるよう、社会全体で支えるためのしくみとして、介護保険制度がスタートしました。

制度の目的は、介護保険法第1条に書かれているように、介護が必要な方がその尊厳を保持し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要なサービスを提供することです。

介護保険サービスの対象者

介護保険制度の保険者(運営主体)は、市区町村です。保険者である市区町村は介護保険事業を責任をもって運営していくことになります。

一方、被保険者(介護保険サービスを利用できる方)は、65歳以上の「第1号被保険者」と40~64歳の「第2号被保険者」に分かれています。第2号被保険者は「医療保険」に加入していることが資格要件となります。

第1号被保険者
保険者である市区町村に要介護認定の申請をし、要支援・要介護の認定を受ければ、必要に応じたサービスを受けることができます。
第2号被保険者
老化が原因とされる16の特定疾病が原因で介護が必要になったと認定を受けた場合は、介護保険サービスを利用することができます。

介護保険の財源について

社会保障である介護保険は、被保険者からの保険料のほか、一定の公費を財源として運営されています。介護費用から利用者負担分を除いた介護給付費は、50%を公費、50%を保険料で賄います。

被保険者の月々の保険料納付は、第1号被保険者の場合、年金からの天引きか直接保険者(市区町村)に納付する形で納めます。第2号被保険者は、国民健康保険や勤務先で加入する健康保険の保険料といっしょに納付します。

企業に勤めているのであれば、健康保険料と同じように給与から天引きされることになります。

介護保険サービスを利用するための手順

介護保険サービスを受けるには、要介護認定を受ける必要があります。役所で申請し、要介護認定を受け、介護サービスの利用プランを立てるという3つのステップを踏みます。それぞれの手順は以下のとおりです。

1.申請する

介護を受けたい方が暮らす市区町村の介護保険担当窓口に行き、介護保険制度利用の申し込みをします。申請に必要な物は以下のとおりです。

  • 要介護認定申請書(窓口にあります)
  • 介護保険被保険者証(40~64歳の方は医療保険証)

※市区町村によっては、かかりつけ医が確認できる物を求められる場合もあります。

なお、申請は本人または家族が行うほか、居宅介護支援事業所地域包括支援センターに代行してもらうこともできます。

2.要介護認定を受ける

要介護認定の申請を行うと、認定調査の日程調整が行われます。

認定調査では、保険者から依頼された介護認定調査員が利用希望者宅を訪れ、日常生活状況のヒアリングと身体機能のチェックを行います。主治医意見書は、市区町村がかかりつけ医に依頼しますが、主治医がいない場合は市区町村の指定医の診察が必要です(作成料の自己負担はなし)。

この結果は、厚生労働省の共通ソフトを使ったコンピューターによる分析(一次判定)と、一次判定の結果に主治医の意見書などを加味して介護認定審査会の審査(二次判定)にかけられ、7段階の要支援・要介護度認定区分のうち、どこに該当するか決定されます。

申請から原則30日以内に郵送で「認定証」と「介護保険被保険者証」が届くという形で、本人に通知されます。要支援・要介護認定の区分は以下のとおりです。

要介護認定の区分

要支援1
日常生活は基本的に自分でできるが、一部何らかの介助が必要。
要支援2
日常生活はほぼ自分でできるが、時々介助が必要なときがある。
要介護1
立ち上がりや歩行が不安定。または日常の中で排泄や入浴など一部介助が必要。
要介護2
自力での立ち上がりや歩行に何らかの支えを必要とする。排泄や入浴に一部または全介助が必要。
要介護3
排泄や入浴、身の回りの世話、立ち上がりや歩行などが自分一人ではできず、全面的な介助が必要。認知症に伴う問題行動が見られることもある。
要介護4
排泄や入浴、身の回りの世話、立ち上がりなどがほとんどできず、介護なしでは日常生活を送ることが困難。問題行動がある場合もある。
要介護5
ほぼ寝たきりで、排泄や食事ができず、介護なしでは日常生活を送れない。意思疎通が困難。

尚、要介護認定の結果に不満があれば、都道府県が設置する「介護保険審査会」に申し出て、裁決を受けることもできます。不明点などがあれば、行政や地域包括ケアセンターなどに相談してみましょう。

3. 介護サービス計画書の作成、利用

介護保険サービスを利用するためには、ケアプラン(介護サービス計画書)の作成が必要になります。

「要支援判定」を受けた場合は、地域包括支援センターへ、「要介護判定」を受けた場合は、市町村(特別区含む)の指定を受けた居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ依頼します。

ケアマネジャーは、本人や家族の希望を聞きながらケアプランを作成します。納得したケアプランができれば、利用するサービス事業者と直接契約し、ケアプランに基づいた介護サービスを利用することができます。

なお、介護保険施設(特養、老健など)や、介護付き有料老人ホームへの長期の入所(入居)を希望する場合には、各施設などにケアマネジャー(計画作成担当者など)がいますので、利用したい各施設などに直接お問い合わせください。

4.介護サービス費用の利用者負担

利用した介護サービス費用のうち、1割~3割を自己負担額として支払い、残りは保険給付となります。尚、自己負担割合は前年度の収入によって決まります。

介護保険制度を知って賢く利用を

介護保険制度は、複雑に思えますが、被保険者が保険料を支払い共同基金をつくっておき、保険事故が起きた際にその基金から保険給付を行うという社会保険制度です。正しく理解し適切に利用しましょう。

著者プロフィール

介護アンテナ編集部Kaigo Antenna Editorial Department

プロフィール
株式会社ベネッセスタイルケア運営の介護アンテナ。編集部では、ベネッセの25年以上にわたる介護のノウハウをはじめ、日々介護の現場で活躍している介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの高齢者支援のスペシャリストたちの実践知や日々のお仕事に役立つ情報をお届けします!


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